『歴史学専攻だより』をお届けします。 2025.01.15 人文学部歴史文化学科卒業生とつながる # 卒業生 Topic & Message# 歴史学コース

2024年12月、『歴史学専攻だより』を発行しました。以下、3回にわたってその一部を転載します。まずは、研究室のようすからです。

転居されたために『歴史学専攻だより』が届いていない卒業生の皆さんもおられると思います。そのような場合には、歴史学コース幡鎌宛にメール(hata6144[a]sta.tenri-u.ac.jp )などでご連絡ください。よろしくお願いします。

天理大学・歴史文化学科の改組

卒業生のみなさん、お元気にお過ごしでしょうか。遅くなりましたが、歴史学専攻だよりをお届けします。

2024年4月、天理大学では学部学科が改組されました。歴史文化学科は、これまで文学部に属していましたが、新たに発足した人文学部になりました。人文学部は人間学部・文学部にあった学科を基礎にして、宗教・国文学国語・歴史文化・心理・社会教育・社会福祉の6学科で構成されます。戦後1949年の大学発足時からの歴史ある「文学部」と、1992年の改組によって誕生した「人間学部」は、現在の在校生が卒業するのを待って解消することになりました。

学科の内部も変わってきています。歴史文化学科は歴史学専攻と考古学・民俗学専攻(当初は考古学専攻)から、2019年4月に歴史学研究コースと考古学・民俗学研究コースの2研究コース制、この4月からは、歴史学、考古学、民俗学の3コース制になりました。研究コース主任は廃止され、旧カリキュラムが残る間は、学科主任の橋本英将先生(考古学)が研究コース主任を兼任します。

歴史学では、これまで、日本史・東洋史・西洋史の3分野に専任の教員を配していましたが、数年前に西洋史の専任教員が退職してからは、非常勤講師の先生方によって支えてきていただいていました。今回の改組により、東洋史・西洋史の分野そのものがなくなり、東洋史を担当の谷井陽子先生は、4月に発足した国際文化学科(国際学部)へ移籍されました。谷井先生には、旧カリの授業などは引き続き兼担していただいています。

新カリキュラムの多くは、これまでのカリキュラムを引き継いでいますが、「文化財の保存と活用」に力をいえるように工夫しています。

1年次の終わりにコースを選択し、2年次からそれぞれの学問を深めていくことに大きな変化はありませんが、新たに、1年次の科目として、「歴史文化基礎演習」を開設し、歴史学・考古学・民俗学の教員がそれぞれの分野の取り組みを紹介することにしました。

2年次には「文化財行政学」を学科の必修科目としました。さらに、過去、紆余曲折のあった歴史学実習を必修化しました。これにより、考古学・民俗学・歴史学のそれぞれの実習科目が各コースの必修科目として統一されました。歴史学実習では、これまで通り、2年次に古文書解読を訓練し、3年次に天理図書館で文書整理の実習を行うことにしています。

このほか、博物館学芸員課程の資格科目の多くを、歴史文化学科の学科共通科目にしました。これにより、歴史文化学科の学生は学芸員資格を取りやすくなっただけではなく、全体に文化財への理解を深められるようになりました。

これまで通り、歴史文化学科では中学校社会、高等学校(地歴)の教員免許が取得できます。これに加え、国際学部国際文化学科で新たに高等学校(公民)の教員免許が取得できるようになりました。以前、高等学校(公民)の教員免許が取得できるよう文部科学省に申請したことがありますが、歴史文化学科では認められませんでした。高校の二つの免許を取得するにはかなり多くの単位を取得する必要がありますが、地歴・公民の両方の教員免許を受験資格とする自治体もあるだけに、一人でも多くの学生が地歴・公民の教員免許を取り、教職の道を進んでほしいと思います。

歴史学コースの活動

〇新入生歓迎史跡見学会

 本年度の歴史文化学科への新入生は33名、2年次で歴史学研究コースに進んだ学生は11名でした。

 コース選択をした学生を対象に研究コース行事として、4月21日(日)に史跡見学会を行いました。近年は、コースを変えながら奈良町を見学しています。本年は奈良国立博物館から興福寺の塔頭のあった登大路(旧知事公舎、吉城園)、依水園、東大寺をめぐりました。

 あいにくの雨でしたが、奈良国立博物館では特別展「空海」を見学し、密教文化に圧倒されました。その後、旧興福寺諸坊があった場所が知事公舎となり、現在ではホテルとして営業している様子を見学しました。依水園では、江戸時代には名所となっていた三秀亭や奈良晒の晒場だった庭園を見学しました。江戸時代から明治以後の奈良の実業家の文化の豊かさ、1300年の歴史が現在も活かされている様子を見て回りました。東大寺では、ミュージアムと大仏殿を見学しました。修学旅行が復活し、外国人観光客がかなり多くなっており、コロナ禍から大きく変わってきたことも体感できました。

・現地見学(研究コース進学歓迎)遠足を行いました。(2024.04.26)

〇『史文』第26号発行、史文会研究会・総会

『史文』第26号(3月発行)には、渡邊勇樹(2022年度卒業)「「かわた」村の支配構造」と天野忠幸「塙(原田)直政の畿内南部支配」の2論文、第25号の特集「歴史学専攻創立30周年記念」に掲載できなかった河内良弘先生の「天理大学文学部歴史文化学科誕生30周年を迎えて」、玉井良幸(2008年卒業)・道端祐介(2019年度卒業)両氏による中学校の教育現場からの報告を掲載しました。2022年12月に急逝された吉井敏幸先生の追悼文を谷山正道先生ほか、吉村綾子(2001年度卒業)・宮本榮子(2005年度卒業)・吉田豊(2011年度卒業)のみなさんに執筆していただきました。

史文会研究会・総会は6月2日(日)に行いました。宮崎亮太(2017年度卒業)「伝えることの大切さ―博物館類似施設で得た経験と知識―」と幡鎌一弘「近世初頭における奈良町の再編」の2報告がありました。宮崎さんは、震災の記憶を伝える活動を含めた博物館の現場からのお話しでした。博物館が抱える現状の難しさがうかがえました。

・『史文』26号を発行しました。(2024.03.27)
・史文会研究会・総会を開催しました。(2024.06.20)

〇公開講座

公開講座「「大和学」への招待」は大和郡山市と橿原市で開催しました。「郡山の歴史と文化2」では、5月25日(土)に幡鎌一弘「『平和のシンボル、金魚が泳ぐ城下町。』を読む」、6月1日(土)に齊藤純(民俗学コース)「蛍の伝承―佐保川の蛍とジャンジャン火迎え」の講演会を開催しました。「橿原市の歴史と文化」では、10月12日(土)に大谷歩(国文学国語学科)「「香久山」とは何か」、10月19日(土)に天野忠幸「織豊政権と今井」の講演会を行いました。

・公開講座記録

〇古文書調査報告書の発行

この間、古文書調査報告書を2冊刊行しました。『天理市杣之内町山口文書調査報告書』(3月)は、考古学・民俗学の先生方と杣之内町山口文書を閲覧させていただいたのがきっかけで、研究室に文書をお借りし、幡鎌が中心になって整理しました。『天理市永原町中村直史家文書調査報告書』(10月)は、谷山正道先生・澤井廣次(天理図書館、2007年度卒業)さんの調査を引き継ぎ、史料実習を履修している学生と共に法量・丁数を調べ、写真を撮影しました。刊行後、ともに記者報告会を開きました。

 報告書を作成してお届けすると所蔵者からお礼をしたいという申し出があります。これまで、お断りをしていたのですが、学科予算は削られる一方で、整理用の封筒や箱を用意するのも難しくなってきました。そこで、学校法人のもとで「使途指定寄付金「歴史資料の調査・保存活動サポート資金」」をたち上げることにしました。

・『天理市杣之内町山口文書調査報告書』(2024.05.07)
・『天理市永原町中村直史家文書調査報告書』(2024.12.04)

〇『月刊大和路ならら』の連載

歴史学コースで企画して天理大学の教員が執筆している『月刊大和路ならら』も引き続き継続しています。歴史学教員の執筆分では、3月号谷山正道「落合平助」、5月号天野忠幸「林宗二」、6月号黒岩康博「岡豊若」、7月号幡鎌一弘「中山平八郎」、8月号谷山正道「浅田松堂」でした。2025年度には、連載を単行本にまとめる計画が進んでいます。

・メディア出演・講演情報・教職員の新刊案内

〇卒業論文中間報告

 6月29日(土)と9月17日(火)の2回にわたり、卒業論文中間報告会を行いました。卒論は大学の勉学の到達点で、積極的に取り組む学生の成長を楽しみにしています。最終的には、1名が卒論を提出できませんでした。本年の卒論の題目は以下の通りです。

近代日本の都市における女性のファッション /  近代日本におけるポートボールの形成 /  アジア・太平洋戦争―ビルマ方面の戦い― /   秋田藩における検地と百姓 /     近世の中日文化交流―長崎を例に― /    在日コリアンの間での朝鮮舞踊の継承について /  鎌倉幕府の成立とその特徴 / 三好長慶と飯盛城 / 近世の宇治茶師 / 「寿硯堂」に通った人々 /  スターリンのウクライナ観

〇編集後記

 改組になって変わったこと、変わらなかったこと。

 谷井先生は国際文化学科に移籍になりましたが、研究室は今まで通り、研究棟2階西側の歴史学の教員の所にあります。共同研究室のプレートは「歴史学研究コース」から「歴史文化学科第2共同研究室」になりましたが、室内はそのまま。コロナ対応で対面にならないようにソファーや机を配置していましたが、コロナ以前に戻しました。教員の年齢と研究室の図書は毎年確実に増えていますが、在籍する学生の年齢はかわりません。もっとも研究室に来る人数と活気は少し減ったような気がします。『歴史学専攻だより』の名称を変えたほうがよいのか、そのままがよいのか…。

 2025年、天理大学は創立100周年を迎えます。色々な行事が行われ、卒業生の皆様にもいろいろとお声がけ、お願いがあると思います。ご協力のほどお願い申し上げます。(編集担当 幡鎌一弘記)

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