『歴史学専攻だより』11号に、2020年3月に卒業した谷井泰斗さんが一文を寄せてくれました。HPに転載させていただきます。
天理大学文学部を卒業して 谷井泰斗
私が天理大学文学部歴史文化学科歴史学専攻を卒業して、もうすぐ2年がたとうとしています。在学中、研究室や学科会へは全くと言っていいほど顔は出さなかったので、初めましての方がほとんどだと思います。
私は今、派遣会社の社員として建設会社に派遣され、施工管理という仕事をしています。実際私がそうであったように、この仕事に聞きなじみがない方がほとんどではないでしょうか。内容は工事現場において直接作業するわけではなく、安全面や工程面、品質や資金など様々な面で工事の管理を行うというものです。建設業界は、発注者や元請けから一次請け二次請け…という階層構造になっているほか、現場寄りになるにつれ建築・土木・電気・管工事等々…様々な細分化も行われており、各間の調整なども行います。一言で言うなら現場監督ですが、これならばイメージし易いのではないでしょうか。
職場で文学部出身ですと言うと驚かれることも多いですが、なぜ建築業界に入ろうと思ったのかと言われると、深い理由があるわけでもありません。私は在学中部活とアルバイトに夢中で、4年進級の単位はギリギリでした。そんな4年生の頃は卒業へは遥かに足りない単位を集めるのに必死で、卒論も就活も二の次になってしまっていました。
結果としては単位も何とか集め、卒論も提出することができました。一方、就活はというと平日は授業でびっしり埋まっていた上、何か明確にやりたいことが決まっているわけでもなかったのであまりやる気もなく、当然内定など遠い夢のような話でした。9月頃になり本格的に焦りを感じ始めたころ、就職サイトのエージェントの方から施工管理という仕事とその派遣会社を紹介していただき、元々ものづくりには興味があったのと、大学の勉強が関係の薄い私でも、派遣という立場ならいろいろな分野を見て回れると考えて志望し、内定をいただくことができました。
就職してすぐは舗装や土木工事を行う会社で勤務していたのですが、そのなかで9月から2年目の5月まで高速道路の付加車線工事に携わっていました。自分にとっては初めて完成まで携わった工事だったので、思い入れも強いものでした。その工事が終わり開通を迎えた時、何とも言えない新鮮な嬉しさを感じました。
就職してもうすぐ2年、その中でもう一つ嬉しいことがありました。それは勤務先が変わるということを仕事で仲良くなった方へ報告した際、「もう諦めてうち来なよ」と本気で誘っていただいたことです。実際にかなり良い条件を出していただき、かなり悩んだのですが、1年前に自分が決めたことを辞めるには早すぎると感じたことや、現状仕事は楽しくできていたため、今の仕事を続けようと決めました。それでも仕事をしているところをみて誘っていただいたことや、これまで人生を決める時に受験や試験はありましたが、必要とされ、誘っていただくということは初めてだったので、とても嬉しかったです。
今現在は製鉄所の中で電気工事等を行う会社で勤務しています。土木とは雰囲気も変わり、ゼロから勉強で大変ではありますが、それでも日々新しいことを学ぶことができ、楽しく仕事ができています。
まだ社会人になって2年も経ってない私が、経験したことのないコロナ禍の中で学生をされている後輩の皆様へ、お伝えすることはあまりありません。前述のように、私の学生生活は部活とアルバイトばかりで勉強のほうは熱心だったとは言えませんし、部活のほうも、個人的には大きな結果もなく、周りの部員と比べれば本気で努力したとは口が裂けても言えません。それでも自分としては満足できる結果は出すことができ、仲間と過ごした4年間は楽しいもので、間違いなく今の自分の土台となっています。
様々な制約がある時代ですが、大学での4年間は、やりたいことに全力で取り組める数少ない期間だと考えます。この場で言うことではないかもしれませんが、それは必ずしも勉強である必要はないと思います。もちろん、勉強であることが一番だとは思いますが…。ともあれ、大学時代に何かに熱心に取り組んだという経験はどんな形であれその後の生活に生きてくるものだと思います。
何か説教臭くなってしまいましたが、私から確実に後輩の皆様に伝えられることが一つだけあります。
単位はちゃんと取りましょう。 (2020年3月卒業)