一度、「上海生活たより」というのを紹介してから、かなり時間が経ちました。第2のたよりをお届けしましょう。
今回は、私がお世話になっている復旦大学を取り上げたいと思います。復旦大学は中国でも有数の大学です。中国に来てから、とある機会に別の大学の学生と話すことがあり、私が復旦大学を訪問中であることを告げると、「復旦大学ですか。すごいですね」と返ってきました。単にお邪魔しているだけの私がすごいわけでも何でもないのですが、中国ではそのようなイメージらしいです。ですから、復旦大学を取り上げようとすれば山ほど話題があるんだと思います。ただし私がそれをするのはお門違いですし、そもそもこの文章を「生活たより」と銘打つのは、あくまで私が見て肌で感じたことをお届けしようと思っているからです。ですので、大きな大きな復旦大学のうち、私が接した小さな小さな部分が今回の話題の種です。
私が「訪問学者」としてお世話になっているのは復旦大学の「文物与博物館学系」、略して「文博系」です。「系」は日本語には「学部」と翻訳されることが多いですので、日本流に言うと「文化遺産・博物館学部」というところでしょうか。ただし、これもまたよく言われることですが、中国の大学の「系」は日本の大学の学部より学問の対象範囲は小さく、どちらかというと学科に近いかなと思います。復旦大学には別に歴史学系というのもありますから、それぞれの系は天理大学歴史文化学科よりさらに小さな学問範囲を対象としていることになります。
復旦大学文博系には、博物館学・文化遺産・考古学・文物保護の4つの部門があります。それぞれの教員数は7人、9人、17人、2人で結構ばらつきがありますが、学生がどのような比率になっているのかは調べていないので分かりません。私を引き受けて下さった秦小麗先生は考古学が専門です。ちなみに秦先生は京都大学で学位を取られ日本語が堪能ですから、ほぼ中国語ができない私でも頼って滞在することができています。
では復旦大学での学びです。1枚目の写真は復旦大学カレンダー(ふたつ折りのカード)の内面(第2・3ページ)です。中国の大学は9月に始まり、1年を第1学期と第2学期のふたつに分けています。1年をふたつに分けるのは日本の大学と同じですね。カレンダーの左半は第1学期です。第0週から第18週まであります。このうち第0週は入学式やオリエンテーションのためのもので、授業は第1週9月4日に始まりました。また第16週~第18週は試験期間なので、授業は第1週~第15週の15回です。ただし、今年は9月28日~10月6日は中秋節(お月見)と国慶節(建国記念日)の連休であり、実質、授業は14回となっています。2月19日に始まる第2学期もよく似た感じです。日本と比較してどうでしょう、ほぼほぼ違わないのかなと思います。ただし、日本ではとびとびに祝日があるのに対して、中国では大型連休以外の祝日はないようです。
2枚目の写真はカレンダーの外面で、左半(第4ページ)には授業時間が示されています。毎日の授業は、8:00に始まる第1節から、21:05に終わる第13節までです。それぞれの節は45分ですが、実際の授業は2節連続の100分、あるいは3節連続の155分で用意されています。文博系の時間割を見てみると、第11・12節にも普通に授業が入っています。天理大学ではどうでしょう、5限18:00まで時間割がありますが、5限の授業はあまり多くないですね。復旦大学では、それより遅くに始まる授業が普通にあるということです。
復旦大学にはキャンパスが4つありますが、私が滞在しているのは、そのメインとなる邯鄲キャンパスです。上海のど真ん中の人民公園のあたりから見ると、北方約10kmというところです。下にその全体像を示します。東西、南北とも1km以上あってとても広いんですが、その図に示すように私が通う文博系は北西のはずれにあります。そして私が出入りに利用する西門や北門、また食堂もすぐ近くにありますから、私は広いキャンパスの大部分とほとんど無縁です。
この地図からは紹介したいことがたくさんあるのですが、ひとつだけ選ぶとすれば、宿舎の占める割合です。図中の濃い茶色が学生宿舎、薄い茶色が職員宿舎であり、全体のかなりを占めています。中国の大学は基本的に全寮制と聞いていましたが、地図を見て、なるほどこのようになるのかと驚きました。ただし、都会にある復旦大学では、すでに宿舎は足りておらず、修士学生の多くは宿舎を得られていないと聞きました。
キャンパスの中には食堂のほか、コンビニやスーパーが各所にあり、キャンパスの中だけで生活はこと足ります。先述のように、授業も夜遅くまでありますから、しっかり勉強をする環境、せざるをえない環境が整っています。実際に学生たちは勉強に明け暮れています。文博系では資料室という部屋が学生が時間を過ごすところになっていますが、みんな資料やパソコンに集中していて、完全に静かです。少しおしゃべりでもできるかと、何度か訪れましたが、とても声をかけられる雰囲気ではありません。こちらに来る前は、学生さんたちとたくさん交流して中国語をレベルアップしようと意気込んでいたのですが、その機会を作ることができないままで、それが今の悩みの種です。そして、天理大学の考古学・民俗学の共同研究室が懐かしいな、と思っているところです。
(2023.12.10 小田木治太郎)
邯鄲キャンパス正門:正門は観光地さながらです。門の奥には毛沢東像が建っています。
邯鄲キャンパス北門:よく利用する門です。ICカードでチェックを受けて入ります。正門とは雰囲気が全然違います。