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 【生涯学習】

《公開講座記録》【外国語への招待】平成蘭学事始-言葉を通して見えてくるオランダ社会

第2回 ● 平成28年6月11日(土) 午後1:00
テーマ ● 平成蘭学事始 - 言葉を通して見えてくるオランダ社会
講 師 ● 小林 早百合 言語教育研究センター准教授

内容

「蘭学」とは、江戸中期から幕末にかけて日本で行われたオランダ語学習と、オランダ語を介した西欧諸科学、技術及び西欧事情の研究とその知識を指します。日本が鎖国をしていた歴史の一時代、オランダ語という小さな言語の窓を通して、辞書にも不自由しながら、当時の最先端の科学技術や学問を夢中で学び、伝えた人々がいました。『蘭学事始』の筆者として知られる杉田玄白もその一人です。しかし、蘭学はペリー来航、続く開国とともに日本から姿を消し、第二次世界大戦の終わりにはオランダ語学習も歴史の中の一ページになってしまいました。

蘭学が日本から消えて久しい平成の今日、私たちにはもうオランダ語を通して学ぶことはないのでしょうか。本講座「平成蘭学事始」は、現在の日本ではその国名を知らない人はいないものの、地理的な位置も言語も、国の事情もほとんど知る人のいないオランダを、もう一度、オランダ語という一つの窓を通して見る機会を提供することを試みたものです。そしてその出発点として、そもそも日本で蘭学がいかにして生まれ、いかにして消えていったのかを歴史の大きな流れの中で振り返り、さらに日本人がオランダ語を捨て(!)英語を選ぶに至る、歴史のまさに転換点に生きた人物として、福沢諭吉に焦点を当てました。

現在のオランダは日本の九州ほどの国土面積を持つヨーロッパの小国です。国の公用語はオランダ語のみですが、英語・ドイツ語と言語的距離が近いこともあり、母語しか話せない人は国民のわずか6%、反対に母語以外に3言語話せる人が37%(EU平均10%)にのぼります。また国籍から見れば、オランダに居住する外国人人口は全人口の4.5%に過ぎませんが、行政で使用されるオランダ独自の「allochtonen(直訳すれば「外来人」に最も近く、本人の出生地に関わらず、両親のどちらかがオランダ生まれではない人)」というカテゴリーがあり、人口の20%以上がこれに相当します。日本から見れば不思議にも思えますが、前女王、現国王、王妃、王女と、現在のオランダ王室メンバー全員がallochtonenです。

もともと冬が長く寒いヨーロッパの北に位置し、土地にも資源に恵まれない海洋通商国家であったオランダは、長年、いわば移民の「輸出国」でした。ところが1960年代、第二次世界大戦後の経済復興による労働力不足に際し、経済復興の遅れた地中海沿岸国からの労働移民の「輸入国」に転じます。1970年代からは南ヨーロッパ諸国出身の移民が帰国し、代わってモロッコ、トルコからの移民が主流となり、労働移民導入当初の予測に反し、オランダ定住化と第二、第三世代の誕生が続きました。現在もEU加盟国として域内の住人の流入や難民の受け入れでallochtonen人口は増えています。こうした国内のallochtonen人口に対するオランダ市民教育の根幹をなすのが、「第二言語としてのオランダ語教育」であり、対外的な国家戦略の根幹をなすのが、「多様で高度な能力を育てる外国語教育」です。多言語を話す能力と寛容を国是としてきたオランダでは、移民に対するオランダ語教育の必要性が意識されることが希薄でしたが、アメリカの同時多発テロ以降、その重要性が広く認識、強調されるようになりました。また、オランダの憲法に規定された「教育の自由」がその存在を保証し、公立学校と同様の支援金を政府が負担し、国内共通のカリキュラム以外に学校独自の宗教教育を行うキリスト教系の私立学校と並んでイスラム教系の初等・中等教育学校が1980年代から全国に存在していますが、国際情勢を反映し、近年この「イスラム学校」に向けられる視線も厳しさを増しています。

高齢化する福祉社会、労働者不足、経済のグローバル化とネット社会の成立、多様な言語・文化背景を持つ人口の流入と定住化など日蘭両社会が共通に抱える課題はたくさんあります。オランダ語という窓を通して現代のオランダが私たちに見せてくれるものが、今回の講座に参加してくださった皆様にとっての「蘭学事始」となれば幸いです。

 

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