
《公開講座記録》【人文学へのいざない】第1回
●2026年5月23日(土) 午後1:30
●テーマ:「社会福祉と福祉の違い:あなたの実践はどっち?」
●講師 松原 浩一郎 (社会福祉学科 教授)
内容
この講座では、社会福祉と福祉の違いを明らかにすることで、社会福祉とは何か?を考えてみました。
最初に、受講者の皆さんの身近なところから福祉について考えてもらうため、ボランティア活動の経験をうかがいました。ボランティア活動には、多種多様な実践があり、その中に福祉的な活動が多くあります。「しかし、それは社会福祉ではないのです・・・」このような問題提起をして、以下のような解説をしました。
社会福祉とは何か?通常○○とはなにか?という定義は、二つの方法がとられています。一つ目は、法律に明記されている場合です。たとえば、社会福祉の専門職である「社会福祉士」については「社会福祉士及び介護福祉士法」の第二条にその業務内容などが定義されています。二つ目は、それに関して、代表する学会において定義が採択されている場合です。ところが、社会福祉の定義は、社会福祉法にありません。また、社会福祉学の研究者が多く所属する日本社会福祉学会においても定義されていません。そのため、社会福祉と福祉は、しばしば混同され、あいまいなまま使われています。
社会福祉と福祉は違うものです。たとえば、あんパンは「パン」の中に「あん」が入っているので、あんパンと呼びます。つまり「あん」と「パン」は別々の物だから、それを組み合わせて一つのモノ(言葉)になっています。あんパンはパンの一種ですが、同じではありません。社会福祉も「社会」と「福祉」を組み合わせてできた言葉です。したがって、社会福祉と福祉は似ているのですが、同じではないのです。
そこで、社会福祉とは何かを考えるため、「社会」と「福祉」を切り離して、それぞれどんな意味なのかを考えてみました。そこで、この二つの言葉を小学生でもわかるように、別の言葉で受講者の皆さんに表現してもらいました。「福祉」は、しあわせや幸福、支援やたすけあいと言う回答がありました。次に「社会」は、 地域や人々、暮らしという回答でした。ところが、「福祉」を言い換えた言葉を詳細に分析すると、「社会」を言い換えた地域や人々や暮らしという意味が含まれていることがわかります。しあわせやたすけあいは、一人では出来ません。しあわせは、家族や人々の関係の中で感じることです。また、たすけあいは、地域の中で暮らしながらおこないます。つまり、「福祉」という言葉に、既「社会」の言い換えである地域や人々と言う意味が含まれているのです。そうすると、「社会」が地域や人々と言う意味ならば、先のあんパンを例にすると、パンの中にパンが入っていることになります。つまりあんがパンと同じ意味になっているのです。それならば、パンと呼べばいいのと同じように、福祉だけいいことになります。パンとあんは違うものだから、あんパンなのです。社会と福祉は違うものなのです。
社会福祉の「社会」の意味を新たに探るため、講座では義務教育について考えてみました。義務教育の内容は、日本国憲法第26条を根拠として、小学校一年生から中学校三年生までの児童生徒が有する普通教育を受ける権利を、保護者である親と国(市町村)に保障する義務を課しているのです。これと同じように、日本国憲法第25条には、国民の生存権を国が保障する努力義務が課せられています。国が法律にその制度を制定して、政策により、公金を活用しておこなう福祉制度と福祉実践が、社会福祉なのです。社会福祉の「社会」とは、国(公)という意味なのです。多くある福祉実践や福祉活動の中で、法を根拠として、公金を支出しながら制度に基づいておこなうものこそが社会福祉と言えるのです。福祉的なボランティア活動には、支えられる側と支える側には、権利と義務という関係性がありません。しかし社会福祉は、あきらかに国に義務があり、国民に権利(生存権)があるという構図になっています。福祉の中の一部分で、国による福祉が社会福祉なのです。