11月29日、堀内みどり教授(附属おやさと研究所)が担当する総合教育科目「ジェンダー・セクシュアリティ」の授業の一環として「NHK 大学セミナー」が、天理大学杣之内キャンパス2号棟にて開催されました。
2025年に橿原市で「日本女性会議2025橿原」が開かれることとなっており、通常の授業に加えて学生たちに「ジェンダー」についていっそう関心を深めてもらいたいとの思いから、この度、学内限定講座としてNHK の番組制作者などが全国の大学で講演をする「NHK 大学セミナー」が企画されました。
NHK で展開するプロジェクト「#BeyondGender(ジェンダーをこえて)」を手掛けている原田由香里氏(NHKエンタープライズ シニアプロデューサー)が講師として登壇し、「性別をめぐる思い込み」(ジェンダーバイアス)と題した講演が行われました。
講演の冒頭、原田氏は、本学学生に聴取した「ジェンダーに関する質問」のアンケート結果とNHKが行った世論調査との比較を紹介しました。
「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき?」との質問に対して、本学学生は「賛成8%」「反対71%」と答えましたが、2021年のNHK世論調査では「賛成41%」「反対49%」となっており、「天理大学生の皆さんのアンケート結果の方が実態に近いのではないか」と、原田氏はコメントしました。
「ジェンダーバイアス」について原田氏は、「ジェンダー」とは社会が作り出した性別であり、「バイアス」とは思い込みであること前置きしたうえで、「ジェンダーバイアス」があるということは「あなたや誰かの生き方や可能性をせばめてしまうもの」と学生たちに説明しました。
また、「学生時代は『ジェンダーバイアス』を感じにくいと思うけれども、社会人になった時、皆さんが『ジェンダーバイアス』を感じることがあるかもしれない。そういった時や何かモヤモヤを感じたときには、一人きりで抱え込まずに色んな人と話をしてみてほしい」と語りかけました。
さらに原田氏は、「自分たちが性別による思い込みに縛られないためには、『自分だから』『あなただから』といった視点で考えるよう心がけること。そして、自分の思い込みに気づくことも大切」と、学生たちに客観的な視点を持つことの重要性を伝えました。
講演の終わりには、性被害や性暴力についても説明し、被害者、また加害者にならないために「あなたが望まない性的な言動はすべて性暴力」という視点で常に考えて行動することの大切さを、学生たちに訴えかけました。
天理大学「総合教育科目」では、学生たちが文系理系を越えて幅広く学び、現代社会で広く求められる基礎的な教養を身に付けられるよう、政治、経済、心理学、法学、スポーツ、科学、データサイエンス、語学など様々な分野の学びを展開しています。ここでの学びは、大学での学びの基礎を培うとともに、将来、社会人として生かせる教養を磨きます。
学生コメント
- 今回の授業を聞いて、今後社会は「性別」という括りで物事を考えるのではなく、個人個人として”自分らしさ”を重視していく必要があることを学んだ。
- 男女で賃金の格差が大きいこと、今でもこのような考え方が残っていることに驚いた。そして、「男女平等」「多様性」を掲げている現代でも、まだまだジェンダーバイアスの考えがあることが分かった。
- 男女の不平等さなど、日常的に不満に感じることはあまりなかった。今回の講義で、現代の社会にはまだまだたくさんのジェンダーバイアスが溢れており、多くの人々の可能性を狭めていることが分かった。女性の「見えないリュック」と男性の「男らしさの鎧」の壁に自分がぶち当たった時は、”誰かと話す!”ということを思い出して、乗り越えていきたいと思った。
教員コメント
講師の原田さんは、受講学生への事前アンケートを授業冒頭で取り上げるなど、学生の関心が授業に向くような工夫や豊富な映像を組み合わせて、日常生活の基層にある「ジェンダーバイアス」について、非常にわかりやすく授業を展開されました。多くの学生が授業を真剣に聞きながらメモをとっていました。授業後に回収した授業メモにもそのことが現れており、原田さんが伝えてくださった「『男だから、女だから』ではなく、『自分だから、あなただから』という考え方を身につける」、「思いこみに気づくためにも周りと話す」、「あなたの望まない性的行為はすべて性暴力」、性暴力被害に遭ったときに相談できるワンストップ支援センターの連絡先などのポイントを記述していました。また、体や性の悩みについて相談できるユースクリニックの情報は貴重なものでした。この企画が学生さんたちにとっても貴重な体験になったと感じています。