2024年12月、『歴史学専攻だより』を発行しました。ここでは、卒業生の武輪みちのさんからの寄稿を転載します。
転居されたために『歴史学専攻だより』が届いていない卒業生の皆さんもおられると思います。そのような場合には、歴史学コース幡鎌宛にメール(hata6144[a]sta.tenri-u.ac.jp )などでご連絡ください。よろしくお願いします。
〇児童指導員として 武輪みちの(2021年度卒業)
私は現在、大阪府内の放課後等デイサービスにて児童指導員をしております。多くの方にとっては、あまり聞き馴染みのない言葉かと思いますが、放デイにおける「児童指導員」とは、発達障害や知的障害などの障がいをもつ子どもに対し、将来的な自立や社会参加のために必要な療育をおこない、子どもたちの健全な育成を支援する職種です。
事業所では、学習支援や運動療育だけでなく、日常生活におけるコミュニケーションや対人スキル、生活動作の向上などを支援します。そのなかで私は学習面の支援を担当しており、子どもたちの宿題をみたり、発達段階ごとの特性や障害特性に応じて、教材を選んだりつくったりしています。もちろん、うまくいかないことも悩むことも多いのですが、日々の療育のなかで、子どもたちの「できた」を目の当たりにする瞬間や、小さな出来事からその子の成長を感じる場面では、たまらなく嬉しい気持ちが込み上げてきます。なにより、子どもたちの無邪気な笑顔を見られることが、仕事へのやりがいにつながっています。
実は、児童指導員というのは任用資格で、児童指導員として働くためには、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を取得するほか、福祉系職種の専門教育を実施する専門学校を卒業する、大学または大学院で社会福祉・心理・教育・社会学系の学科や研究科を卒業・修了するなどの必要があります。では、歴史文化学科出身の私がなぜこの仕事に就くことができるのか。それは、私が在学中に教職を学び、中学校・高等学校の教員免許を取得していたからです。つまり、教員免許も、児童指導員の任用資格となります。
大学での4年間は、仲間と切磋琢磨しながら講義や演習に取り組み、教育実習では目まぐるしい日々のなかで教師という仕事の素晴らしさや愉しさを実感しました。その反面、自身の人間としての未熟さをあらためて痛感し、教師の適性がないと感じた私は、結局その道へは進まず、卒業後は歴史文化学科の事務助手として、研究室の管理や学生のサポートをしていました。しかし、「子どもたちの未来のために働きたい」という気持ちが強く、教職の知識や資格を生かせる職業を探して、いまに至ります。
一見すると関係のないことのように思えたり、努力が無駄になってしまったと感じたりすることがあっても、「あの時の学びがいまに生きている」「あの経験がこんなところで役に立つとは」と思える瞬間がきっと訪れます。それは私のような若輩者より、人生経験を積んだ先輩方ほど感じることが多いのではないでしょうか。安い言葉のように聞こえるかもしれませんが、「人生に無駄なことなんてひとつもない」というのは、案外ほんとうです。ですから、学生のみなさんには、目の前のことに真剣に向き合って、なにごとにも一生懸命に取り組んでいただきたいと思います。その経験や思いは、きっと貴方の素晴らしい財産となりますから。