《公開講座記録》【人文学へのいざない】第3回
●2024年6月8日(土) 午後1:30
●テーマ:地域を元気にするボランティア人財になろう!
●講師 佐々木 保孝(社会教育学科 教授)
こんにちは。天理大学人文学部社会教育学科の佐々木保孝と申します。どうぞよろしくお願いします。天理大学は本年の4月に改組をしまして、人文学部を設置しました。それにともない私の所属も「社会教育学科」という新しい学科になりました。「社会教育」とは、広い意味では学校教育の他にも社会に存在する様々な形の教育を総称する言葉です。この言葉に今日はぜひ耳馴染みになって帰っていただければと思います。
さて、スクリーンに映している写真は、地元のお祭りに天理大の学生の数十名がボランティア参加したときのものです。私もハッピを着て一緒に参加して楽しかったですね。このときはお神輿の担ぎ手だったので、ボランティアというより地元民として楽しく参加したという感じも強かったですが、実は学生たちの参加がないとお神輿が出せないかもしれない状況だったそうです。次の写真は、学科の学生数名と、過疎化が進んでいる地区の公民館に出かけて行った時のものです。最初は実習の一環で訪れましたが、地元の方のお話しを聴きながら村の方々の地元への思いに関心を持った学生がでてきました。彼女たちは、その後、コロナ禍で途切れていた公民館祭の再開に関わったりしていきましたので、地域に新しい風を吹き込んだ面もあるのかなと感じています。
これらの写真に出てきた人たちはみなさん、本日のテーマである「地域人材としてのボランティア」ということになるかと思います。営利的な報酬を求めるわけでもなく、楽しみながらも真剣な活動のなかで気づきや発見を得て成長する人もたくさんいます。在住していない大学生が「地域人材」かどうかというのは見方は分かれるかもしれませんが、活動を通じて地元の方も含めた参加者間に関係性ができている点がポイントで、持続的に当該地域に関心を持つようになってきているのを私も目の当たりにしています。
いわゆる「関係人口」と呼ばれるものですね。かつて多かった「重たい人間関係に縛られる」という地域社会の姿ではなく、テーマ性のある活動を通じていわば「新しい地縁」をつくりだすことで参加者が当該地域の再生や活性化にとっての人の財(たから)になっていくことが大事だと思います。
「活動したくても人がいない」という話もよく聞きますが、これは鶏と卵の関係というか、最初は有志だけの集まりで小さく始まっても充実した活動ができることで認知が広がってボランティア参加者が増えていき、そうなると質量ともに活動がブラッシュアップされていくといった流れをつくるように意図的に仕掛けていくことも必要となるでしょう。その際には、実は様々な学習支援の要素が重要になってきます。
例えば、地域や生活で感じる問題を学習課題としてテーマ化していくとか、受容的で話しやすい雰囲気をつくって参加者の気持ちや意見を引き出していくとか、行き詰ったときに寄り添い傾聴していくとかいったことです。
また、活動が発展していく過程では、ひとつの団体(グループ・組織)に所属するひとを増やすことを目指すよりも、いろいろな人や団体を協働できる状態につないでいくことのほうが効果的な場合も少なくないので、「つなぎ役」がとても大事な役割にもなってきます。時には、適切なアドバイスをくれる専門家とつながれたりするとより深まりもでてきますね。
このようにまとめて言ってしまうと、ちょっと大変かなと感じられるかもしれません。でもひとりの人物が全ての要素を兼ね備えていなくても、自分にできる得意な面を少しずつ出し合って、役割分担と共有を図ることで地域人材としてのチームができあがっていく、といった展開になるほうが持続可能性も高まって、今の時代状況には合っているような気もします。これからの地域づくりは人が自分の可能性に気づいたり、活かしたりしながら活躍できる場作りをともなっていくことが求められます。
そうした地域を元気にする人財として一歩踏み出してみたいと思われる方は、「社会教育士」という称号を得て活躍している事例がいまたくさん出てきていますので、ぜひ検索してみてください。本日はありがとうございました。