《公開講座記録》【ウェルネスライフのすすめ】第2回 かしこい健康診断の受け方・活かし方 2023.11.11 社会連携生涯学習公開講座記録

【ウェルネスライフのすすめ】第2回

●2023年11月11日(土) 午後1:30
●テーマ:かしこい健康診断の受け方・活かし方
●講師  畑中 徳子(医療学部臨床検査学科 教授)

内容

臨床検査の使命は目に見えない体の中をみえる化すること、特に健診では無症状の段階で病気の兆候がないかを見つける、すなわち臨床検査値でしかわからない病気の種をみつける役割を担っています。この臨床検査値を知って「かしこい健康診断の受け方・活かし方」のためのポイント3つをお話します。

1つ目のポイント:健診で使われる様々な検査の意味を知って活用しましょう。健診採血で実施される検査値が変化する原因は大きく2つに分けられます。一つは細胞が壊れ細胞内の成分が血液中に漏れ出て高くなる項目(ASTやALTなど)と、もう一つは摂取量や体内での合成量・排泄量の過不足により高くあるいは低くなる項目(アルブミンやγ-GT、尿素窒素など)です。検査結果の解釈はこれらの原因と関連する臓器や疾患を考えあわせて総合的に判断されます。健診結果の「異常なし」や「経過観察」などのコメントだけでなく、検査値の一つ一つをじっくりと眺めてみて、自身の日頃の値を知っておくことは、健診結果活用の基本となります。報告書の検査値を使って指数や指標を計算してみるのもお勧めです。例えば動脈硬化指数、eGFR(腎臓の排泄能の指標)、FIB-4 Index(脂肪肝から進展する肝臓の線維化の指標)などは、インターネット検索で検査値を入力する画面があり、手軽に利用することができます。より詳細な情報を使って健康管理することに活用しましょう。

2つ目のポイント:健診を受ける前の注意事項はたくさんありますが、全てに意味があり守ることが大切です。私たちの身体は1日のリズムをもって変化するため、検査値は個体内変動と呼ばれる生理的な変化を示します。一番の例が血糖値で食後に高くなります。また激しい運動やストレス、午前や午後で高くなる検査値もあります。このような理由から健診前は、「1)採血数日前より強い運動は避け、2)採血前夜の過労、過度のストレス、過度の飲食、飲酒はないように、3)採血前10時間以上絶食(水分補給は可) で、4)午前8時~9時の間に、安静にして採血」といった案内が示されているのです。健診前の注意事項を守ることで、病気による検査値の変化が見つけ易くなり健診の目的を果たすことができます。

3つ目のポイント:検査値横に付くLやHに一喜一憂するよりも、毎年の健診結果を並べて自身の検査値の変化(前述の個体内変動:日頃の生理的な変化の範囲)を知っておくことが大切です。ちょっと難しい話になりますが、報告書に記載されている基準値には2種類あり、大勢の健常者の95%が示す範囲と、高脂血症や糖尿病などの診断ガイドラインで示された値が使われています。健常者の95%範囲の場合、現在健康であっても5%の人は範囲外になります。一方、ガイドラインで示された値では、これを超えると現在は健康であっても将来、生活習慣病を発症するリスクが高くなることを意味しています。どちらの基準値でもこれを超えるとLやHが付きますが、解釈は全く異なってきます。また健常人の95%範囲は、採血条件などを揃えて個体内変動をできるだけ小さくして求めていますが、個体間変動(個体間差:一人一人の違い)は小さくすることができません。その代表が性別で、男性ホルモンと女性ホルモンの働きの違いで、明らかな差を生じる項目があります。男性>女性となるのはヘモグロビン、クレアチニン、尿酸、γGT、など、女性>男性となるのはHDL-コレステロールなどです。ほかに年齢、食習慣、喫煙習慣、飲酒量などは、検査値を変動させる要因となります。性別については男女それぞれの基準値が報告書に記載されますが、年齢については20歳から60歳の幅広い年齢層で一つに纏められたものが用いられています。個体間変動(個体間差)の大きい検査項目は基準値の幅も広くなるので、LやHだけを指標せず日頃から自身の生理的変動の幅を知っておいて、最新の健診結果を比較すると良いでしょう。検査値に大きな変化がみられたときは受診のきっかけにしてください。

以上、3つのポイントをお話しましたが、健診結果の理解が深まっただけでは効果はありません。健診結果に基づいた生活習慣の改善と生活習慣病の発症予防に繋げることが大切です。

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