《公開講座記録》【外国語への招待】第3回 英語の「音」は語る —個別音からプロソディまで— 2023.07.01 社会連携生涯学習公開講座記録

【外国語への招待】第3回

●2023年7月1日(土) 午後1:30
●テーマ:英語の「音」は語る —個別音からプロソディまで—
●講師  山本 晃司(外国語学科英米語専攻 准教授)

内容

2023年度の「外国語への招待」では、人が作り出す音、特に英語の音に焦点を当て、その不思議な世界を具体例とともにお話ししました。英語では「言語」を“language”と言います。
そして“language”を英語語源辞典で引いてみると“tongue”「舌」とあります。なぜ“tongue”が“language”の語源なのでしょうか。例えば、ア行をゆっくりと声に出して読んでみましょう。舌の動きによってその音色が変わっていくことに気づかれると思います。舌は、ア行に限らず、口の中のどこかと接触・接近することでさまざまな音を生み出しているのです。
そう考えると、“tongue”が“language”の語源になっているのも納得していただけるのではないでしょうか。

突然ですが、赤ちゃんを抱っこしている自分の姿を想像してください。その時、赤ちゃんの頭は自分から見て左側、または右側のどちらにあるでしょうか。もちろん、その抱っこの仕方は人によって異なります。しかし、ある文献によると、左側に赤ちゃんの頭がくる抱き方をする人(特に女性)が多いそうです。この背景には人の脳(右脳と左脳)の機能の違いが関わっているようです。単純化しすぎてお叱りの声を受けるかもしれませんが、右脳は感情やイントネーション、左脳は言語を司ると言われています。そして左耳から入った情報は右脳へ、右耳から入った情報は左脳へ伝わります。つまり、赤ちゃんの泣き方からあらゆる情報をいち早く察知するために、赤ちゃんの頭が左側にくる抱っこをする人が多いのです。ちなみに、この抱き方は赤ちゃんにとっても良いようです。親に抱っこされた赤ちゃんの右耳は親の胸元でふさがれています。しかし、左耳は空いた状態です。お察しの通り、赤ちゃんは親の話し方などを左耳から聞いて、その感情を解読しているのです。

またまた突然ですが、“naluma”, “takete”と聞いて、皆さんはどのような形を連想されるでしょうか。これも人によって異なりますが、前者は丸い、または柔らかい形状の物、後者は尖った、または硬い形状の物などを思い浮かべているかもしれません。これも音が関係しています。ある音響ソフトを使って、前者で使われている“n, l, m”、後者の“t, k”の波形を見ると、前者は緩やかな線を描いているのに対し、後者は鋭い線を描いています。つまり、この波形の違いが耳を通して脳に伝わり、その音にあった図形を連想させている可能性が高いのです。

このお話の延長線として、音が性別を示しうる例も紹介しましょう。天理市のご当地キャラクターに「りんちゃん」、「てくちゃん」がいます。どちらが男の子・女の子でしょうか。おそらく「りんちゃん」が女の子、「てくちゃん」が男の子と答える人が多いのではないでしょうか。これも先に述べた波形が関わっているようです。丸っこい波形が女の子、尖った波形が男の子を連想させるようです。ただ、ここで挙げた例はあくまで言語学的な実験に基づく話であり、決して「女の子・男の子の名前にはこういった音を使うべき!」と言っているわけではありません。

続いての質問。目の前に2つのテーブルがあります。その材質、構造は全く同じですが、大きさのみ異なります。それらのテーブルに“mal”または“mil”という名前を付けるとすれば、どちらの机にそれらの名前を付けるでしょうか。不思議なことに、大きい机に“mal”、小さい机に“mil”を選ぶ人が多いのです。やはりこれも音、今回は“a”と“i”の音の作り方が関連しています。前者は口の開きが大きく、舌も位置も下がった状態の音です。後者は口の開きが狭く、舌の位置も高い状態の音です。つまり、口の中の空間(広いか狭いか)が大小のサイズにつながっていると考えられます。

ここまではすべて一つひとつの音についてのお話でしたが、英文における強勢の位置やイントネーションのお話しもしました。紙幅の都合上、すべてをお話しすることはできませんが、時に音は文字以上の情報を伝えることがあるということです。

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