2月13日から25日にかけて、東乗鞍古墳(天理市杣之町)の発掘調査を、天理大学歴史文化学科考古学・民俗学研究コースと天理市教育委員会が共同で行いました。桑原久男教授、小田木治太郎教授、橋本英将教授の指導のもと、同コースの学生23人に他学部・他大学の6人を加えた総勢29人の学生が参加しました。
天理大学と天理市が2014年に結んだ包括的連携に基づき、2017年、本学文学部と天理市教育委員会が、「天理市内埋蔵文化財の調査・研究に関する覚書」を締結。この覚書を交わしたことにより、2018年から、毎年共同で東乗鞍古墳の発掘調査を行っています。この発掘調査は天理市の埋蔵文化財の保存・活用を図る官学連携プロジェクトとして注目を集め、また考古学を志す学生に対しては貴重な実践学習の機会を提供してきました。
杣之内古墳群のうちの一つである東乗鞍古墳は全長約83メートルの前方後円墳で、古墳時代後期(6世紀頃)の全国でも有数の大型古墳です。
6回目となる今年の調査区は、前方部南斜面と前方部南西隅の2ヵ所。前方部南側の形状と築造方法を把握することを主な目的としました。
今回の調査では、その前方部南側のコーナー部が特定でき、また、前方部南斜面では、後の中世の時代に墳丘の一部が改変・再利用された形跡を確認することもできました。
これまでの調査では、土師器(はじき)や須恵器(すえき)といった古墳時代の土器片が出土していますが、埴輪はほとんど発掘されていません。一方で5世紀末頃につくられた近隣の西乗鞍古墳では埴輪が多く見られます。出土品の違いから、東乗鞍古墳と西乗鞍古墳で築造時期に差があることを物語っているのではと考えられます。
今回の調査結果を踏まえ、来年も引き続き、前方部南側の発掘調査を重点的に行っていく予定です。
歴史文化学科 考古学・民俗学研究コース 小田木治太郎教授コメント
東乗鞍発掘調査は、「考古学実習」の実践授業を兼ねており、そのほか考古学に関心が高い有志の学生が参加しています。実習は、まず墳丘に生える木の伐採から始まり、掘削、土層・遺構・遺物の検討、写真や図面の整理、調査日誌の作成にミーティングと、多岐にわたります。屋外での作業は体力を要しますが、学生たちは楽しそうに取り組んでくれています。文化財保護に関わる職業を目指す学生にとっては、実践力を育む好機会となっています。この発掘調査が考古学の進展に寄与し、また、遺跡・遺構・遺物を適切に把握・保護し未来に継承していくことが、地域課題の解決の一助となることを願っています。
実習に参加した片岡隼さん(考古学・民俗学2年、熊本県立鹿本高)コメント
「考古学実習」での実習期間は1週間ですが、先輩方から教えていただいた土器や土層の話がおもしろく、全調査期間の2週間毎日参加することにしました。おかげで、ひと通りの発掘のプロセスを学ぶことができました。参加する前は、各自で黙々と作業するイメージを抱いていましたが、想像以上に力仕事が多く、皆で協力し合う大切さを実感しました。今回の調査で、有孔円板(ゆうこうえんばん)が出土した時は、思わず興奮しました。自分でも土器片を見つけましたが、土の色と似ていて判別が難しかったです。そのほかにも土層断面図を作成するなど、さまざまな体験ができました。