【教員コラムNo,1】看護学生から教えられること 2023.04.26 医療学部看護学科 # 教員コラム

医療学部看護学科 梶谷 薫

地域・在宅領域の実習では、看護学生が療養者のお宅に訪問し、看護師の看護を見学し、時に看護師の指示のもと、少しの援助をする。看護学生は病棟実習とは違う場所で、違う緊張感を味わっている。看護の対象となる療養者は、ご家族に支えられている方ばかりではなく、ひとりで支援を受けながら生活している方もいる。看護学生は、療養者が病を患いながらも暮らしていることに驚き、また看護の可能性に喜び、そして時には療養者の生活の困難さを目の当たりにして苦しい思いも抱くことがある。

~ある学生の経験~
療養者Aさんのお宅を訪問する看護学生は、今日は何がなんでもAさんの望む暮らし、つまり「看護の目標」となることがらを聞き出したいと思っている。明日はカンファレンスでAさんの望む暮らしを発表しないとならないのである。

「望む暮らし」

Aさんは今の暮らしに何を期待しているのだろうか、現状維持が望む暮らしであることはよくあること、病気が進行しない、褥瘡が悪化しない、食べ過ぎているから少し減量することも必要かな…と私は考えていた。そして看護学生はAさんと話すことができるのだろうか。看護学生はどのように問いかけるのだろうか。
私は少し心配していた。2回目の訪問、それほどAさんと関係構築ができているとも思えない。そうこうしているうちに
看護学生が訪問先から帰ってきた。そしてAさんとのやりとりを話してくれた。

看護学生:Aさんが今したいことは何ですか?
望む暮らしって何ですか?
Aさん:私、パンダちゃんが好きなの。
昔みたいにパンダちゃんが見たいの。
そんなこと無理だってわかってるけど…。
パンダちゃんを見に行くってことは、病気が悪化するってことだって
わかってるけど…。
もう一度パンダちゃんがみたいなぁ。

このやりとりの場にいた看護師は、Aさんがこのような想いを抱いていたことに驚いていた。看護学生は、何度もかかわっていた看護師も知らないAさんの想いを引き出したのである。
そして学生はAさんの想いを受け止め、豊かな発想で、共通の目標を考え、Aさんの望む暮らしのための看護目標を提示することができた。

学生はAさんの今の望む暮らしを尋ねたと思う。しかしAさんの望む暮らしは、「いまここ」にあるのではなく、過去といま、そして未来へとつながっていた。
学生は見えない過去や未来に思いを馳せ、Aさんが生きてきた、そしてこれから生きていくことに関心を寄せ援助の方向性を示すことができた。

~学生から教えられること~
看護上の目標、望む暮らしは人生を捉え、豊かに考えるべきだった。看護師はAさんが生きてきたように、この先も生きていけるように支援する必要かある。そのためには、Aさんが何を望んでいるのか、しっかり聴かなくてはならない。
私は、看護学生の素直さ、ストレートさ、なんと頼もしいことか、と嬉しくなった。
この会話ひとつで、Aさんはひとつ救われたと思う。看護が動き出すきっかけをつくっている。このような素敵な看護を私に教えてくれて、看護学生には感謝ばかりだ。
そう、いつもいつも。

関連リンク

ページ先頭へ