《公開講座記録》【ウェルネスライフのすすめ】第1回 穏やかにくらすためのがん予防 2023.10.28 社会連携生涯学習公開講座記録

【ウェルネスライフのすすめ】第1回

●2023年10月28日(土) 午後1:30
●テーマ:穏やかにくらすためのがん予防
●講師  山中 政子(医療学部看護学科 教授)

内容

1.科学的根拠に基づいたがん予防とがん検診

昭和56年以降、死因別の死亡率が最も高いのは悪性新生物であり、おおよそ2人に1人が一生のうちにがんと診断されています(がんの統計2023)。がんを予防すること、がん検診を受けて早期発見することは、医療者のみならず国民一人一人の課題であるといえます。

国立がん研究センターをはじめとする研究グループでは日本人を対象とした調査を実施し、その結果を基に5つの生活習慣(禁煙・節酒・食生活・身体活動・適正体重の維持)と感染を「日本人のためのがん予防(5+1)」に定めました。これらの生活習慣を5つとも実施した場合は0~1つのみ実施した場合と比べて、がんになるリスクが男性で43%低下、女性で37%低下すると報告されています(Sasazuki, S. et al., 2012)。

国立がん研究センターの調査結果からは、喫煙によってがんになるリスクが確実に増加するのは全がんと食道がん、肺がん、胃がん、膵がん、子宮頸がん、肝がん、頭頚部がん、膀胱がん、大腸がんとされています。また、適量を超えた飲酒によってがんになるリスクが確実に増加するのは全がんと肝がん、食道がん、大腸がん、痩せすぎおよび肥満によってがんになるリスクが確実に増加するのは乳がん(閉経後)と肝がんとされています。これらの結果は、生活習慣の改善ががんになるリスクを減らすことを裏付けています。生活習慣改善の1つ目は禁煙です。たばこを吸わないことや他人のたばこの煙を避けることが必要です。2つ目は節酒です。がんのリスクが高くなる飲酒量が、1日あたり日本酒で1合、ビールで大瓶1本、ワインでグラス2杯であることを目安に節酒しましょう。3つ目は食生活の見直しです。推奨される1日あたりの塩分摂取量は男性で7.5g未満、女性で6.5g未満です。漬物や汁物を控え、塩や醤油はかけないでつけて食べ、酸味や香辛料を利用するとよいでしょう。推奨される1日あたりの野菜の量は350gです。サラダや煮物、野菜スープなどを小鉢で5つ分ぐらいを摂るようにしましょう。4つ目は身体活動です。毎日身体を動かしましょう。5つ目は適正体重です。BMIを算出し[体重(kg)÷身長(m)2]、男性なら21~27、女性なら21~25に維持しましょう。最後は感染です。ピロリ菌と胃がんなど、細菌やウイルスへの感染ががんの発生と関係しているものがあります。かかりつけ医と相談して対応しましょう。

生活習慣の改善はどうしたら実行できるのでしょうか。例えば、過剰な飲酒でがんリスクが高まると知った人は、節酒によるメリットとデメリットを天秤にかけ、メリットの方が大きいと感じた場合に望ましい保健行動(節酒)を開始するといわれています。しかし、保健行動を持続させるためには“きっとできるという自信”つまり自己効力が必要です。この自己効力を高める情報源のひとつに成功体験があります。明日から禁酒するぞと大きな目標を掲げるのではなく、飲酒量2割減といった小さな目標を立てた方が実行しやすく、 目標達成によって自信をもつことができます。このような小さな目標を段階的に決めて取り組むと成功体験を積み重ねることができ、生活習慣改善の継続につながります。

がん予防と合わせてがん検診も大切です。国が推奨しているがん検診の対象臓器は、胃、子宮頸部、乳房、肺、大腸です。がんの早期発見・早期治療による死亡率減少効果がありますのでがん検診を受けましょう。

2.医療者とのコミュニケーションのコツ

がん検診でがんの疑いや診断を受けた人は、医師からの説明を受けて検査や治療などを意思決定します。しかし、医師の話す説明がよくわからない、質問して気を悪くされないだろうか、聞きたいことを聞きそびれてしまった、説明されたことを忘れてしまったといった様々な困りごとが意思決定を難しくしています。そこで、医療者とのコミュニケーションのコツをお伝えします。あらかじめ相談したいことを書き留めておいて見ながら質問する、メモを取りながら聞く、理解や納得ができない場合はためらわずに質問する、自分の考えや望みも伝える、そして、重要な事柄は短く復唱して確認する、これらを是非実行してみてください。

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