天理大学人文学部の国文学国語学科のカリキュラムは、国文学・国語学の両方の分野をバランスよく学べる構成になっています。今回は、2年次に開講される近代文学特論1を紹介します。
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この授業では、「地球上に生きる生命としての人間の生態圏(エコロジー)」を探究することをコンセプトに、宮沢賢治、岡本かの子、北條民雄、石原吉郎、石牟礼道子の「食」や「病」をテーマにした作品を読み進めています。

この日の授業ではハンセン病について勉強し、客員教授の中江有里先生も論じていらっしゃる北條民雄の「いのちの初夜」を読みました。その核心を支える、佐柄木の「いのちの理論」の説明には、特別に熱が入ります。

ハンセン病そのものについて、1996年に至るまで隔離政策が続いていたこと、また現在に至るまで残る差別の問題について初めて知った学生からは「衝撃的でした」という感想をもらいます。また「いのちの初夜」を読んだ学生からは、「“人間”“生命”とは何なのか、改めて考えさせられた」という実直な感想が見られます。
人間の「いのち」というものは、全てを奪われてしまっても「価値があるもの」であり、「一つの力である」ことが伝わればと思います。
(人文学部国文学国語学科 中村晋吾)