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 【生涯学習】

第4回 中国とベトナムの国境地域を探る

第4回
●2019年7月6日(土) 午後1:30
●テーマ: 中国とベトナムの国境地域を探る
●講師  芹澤 知広 地域文化学科教授

内容

1.中越国境地域をまたぐ民族

中華人民共和国では現在56の民族が、ベトナム社会主義共和国では現在54の民族が国家によって認定されている。中国には国家人口の大多数を成す「漢族」が、ベトナムには国家人口の大多数を成す「キン族」(「ヴェト族」ともいう)が含まれているから、中国には55の少数民族が、ベトナムには53の少数民族がそれぞれあるといえる。
しかし両国の国境地域にあたる山岳部に、国境をまたぐかたちで居住する少数民族について、その分類や名称が両国で一致しているわけではない。例えば中国の「漢族」は、ベトナムでは主に「ホア族」であるが、ほかにもシナ・チベット語族の漢語グループとして、ベトナムには「サンジウ族」と「ガイ族」がある。中国で自治区を構成する「チワン族(壮族)」は、ベトナムでは「ヌン族」になっている。

2.中越国境地域をフィールドワークする

中国とベトナムのあいだの主要な関所は3か所ある。ベトナムから中国へ入るということで考えてみよう。まず首都のハノイから北西に位置するラオカイ省の省都ラオカイ。その向こう側は、中国雲南省河口ヤオ族自治区の河口鎮である。
もう1つは、ハノイから東へ行き、中国広西チワン族自治区の省都南寧へ向かう道の国境の町、ランソン省のドンダン。向こう側の中国の町は憑祥。この国境を通るのが王朝時代からの正式なルートである。2019年2月、アメリカのトランプ大統領と会うために中国経由でハノイを目指した、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長もここを通っている。
最後は、北部湾(かつては「東京(トンキン)湾」とよばれた)に面した、クァンニン省のモンカイ。向こう側は中国広西チワン族自治区の東興市。私はモンカイと東興市へ、それぞれ別々に出かけたことはあったが、2016年に初めてここから中国へ行き、同じ日にベトナムへと戻ってきた。この中越国境地域沿岸部の文化的な特徴については、別に拙文で紹介している(芹澤 2018)。なお、本講座のもとになるフィールドワークは、JSPS科研費による共同研究「中越国境地域の市場に見る民族間交流とエスニシティの文化人類学的研究」(研究代表者芹澤、課題番号26300038)によって可能となった。

3.国境貿易に携わる人々を観察する

国境をまたいだ暮らしの一端を紹介しよう。国境で通関する人たちを見ていると、荷物をたくさん持っている女性が多い。ベトナムからベトナムのものを持って行って、中国から中国のものを持って帰る。モンカイで聞いたところ、モンカイに住んでいる人たちは、もともと中国と行き来して生活していたので、特別な通行証を与えられていて、毎日行ったり来たりするのに便利なようだ。なかには内緒で、中国側の友人の家に泊めてもらい、朝早くから中国側で商売をしている人もいた。
国境をこえる婚姻関係をもった女性が国境貿易を担っていることも多い。多くはベトナム人女性が中国人男性に嫁ぐ。直接に本人から聞いたこともあるが、中国人男性と結婚しているベトナム人女性のなかには、小さい時に誘拐されて連れて来られた人もいる。
ベトナムでは良質の自国の製品はまだまだ少なく、中国製品は安くて良質と考えられているので、ベトナムの生活用品の多くが中国製である。中国で買ったものを手で持って帰ると、ベトナムで買う商人がいる。ベトナムから中国へは、煙草や香水などの加工製品に加え、水牛の角(つの)や、まな板用の木材など原材料が多い。アメリカのブランドの煙草やシャンプーは、世界商品としては同じ品物でも、ベトナム市場向けにベトナムで製造された商品は、中国市場向けに中国で製造された商品よりも価格が安いため、ベトナムから中国へ持って行き、中国人に売ると利ザヤが稼げるのである。


【参照文献】
芹澤知広
2018 「ヌン族の華人の祀る神 -中国・ベトナム・オーストラリアの実地調査から-」『アジア・アフリカ地域研究』(京都大学)、第17-2号、227-257頁。

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