
7月3日、天理大学にて、細谷祐司(人文学部非常勤講師)が担当する共通教育科目「科学と現代」において、第15回授業「里山オーガニックプロジェクト・社会連携・オーガニック農法」を実施しました。
本科目では、科学技術の歴史や現代社会との関わりを学び、科学的な視点から社会課題を考える力を養うことを目的としています。今回は、地域でオーガニック農業や社会課題の解決に取り組む実践者を講師に迎え、科学・環境・地域社会との関わりについて学びました。
これまでの授業の中で、学生らは、天理市・天理大学の頭文字「T」と、お茶を意味する「Tea」を掛け合わせた「プロジェクトT」のレポート作成に取り組んできました。
レポート作成にあたって学生らは、福住町の住民、茶農園の経営者、天理市長、株式会社モンベル代表取締役社長、天理大学学長などの中から一つの立場を選び、その立場になりきって、過疎地域が抱える課題と活性化策を考えるロールプレイ形式のレポート作成に取り組みました。
最終となったこの日の授業では、はじめに、健一自然農園の北岡海斗氏より、「天理市福住から全国にお茶を通じた自然貢献」をテーマに講演が行われました。
福住町では、かつて茶産業が盛んでしたが、生産者の高齢化や後継者不足により、多くの茶畑が耕作放棄地となっています。
北岡氏は、放置茶畑が自然環境や野生動物に及ぼす影響について説明するとともに、農薬や肥料を使用しない自然栽培や、放置された茶の木を活用した「里山三年晩茶」の開発など、地域資源を生かした取り組みを紹介しました。
また、学生たちは里山三年晩茶を試飲し、環境保全と地域産業の再生を両立する実践について理解を深めました。

続いて、本学卒業生で株式会社New Earth代表取締役の片岡徳久氏が、在学中の活動や起業に至った経緯、現在の事業について講演を行いました。
片岡氏は、大学在学中に地域の清掃活動や東日本大震災の被災地支援などに取り組みました。ボランティア活動を継続するためには安定した資金が必要だと考え、大学卒業を前に起業。現在は、リユース・リサイクル事業などを通して会社を経営するとともに、その収益の一部を活用した社会貢献活動を展開しています。
講演では、能登半島地震の被災地での支援や産業復興に向けた活動についても紹介されました。片岡氏は学生に対し、人生の多くの時間を占める仕事について、「単に生活のために働くのではなく、自分の力をどのように人や社会のために生かすのかを考えてほしい」と語りかけました。

また、本学副学長であり、天理アグリ株式会社代表取締役を務める岡田龍樹副学長が、日本の農業が抱える課題と同社の取り組みについて講義を行いました。
農業従事者の高齢化や後継者不足に伴い、天理市内でも耕作放棄地が増えていることから、天理アグリ株式会社では、地域から農地を借り受け、農業法人などと連携しながら、地域特産の「刀根早生柿」や野菜の栽培に取り組んでいます。
収穫した農産物は、天理駅前の「天理大学i CONNECT Shop」などで地産地消の商品として販売されているほか、県外への出荷でも一定の需要を得ていることが紹介されました。
今後は学生がインターンシップやアルバイトとして農作業に参加し、農業を実践的に学べる機会の充実も目指していることを学生らに伝えました。

授業の最後には、「プロジェクトT」のレポート表彰式が行われ、最優秀賞をはじめとする優秀作品の受賞者が表彰されました。
最優秀賞には、工藤源喜さん(体育学科1年次生)が提案したレポート、学生起業家の立場から考える福住茶再生プロジェクト「日本初の『推せる茶畑』」が選ばれました。
同レポートでは、「茶の木」オーナー制度を中心に、SNSによる情報発信やスポーツ大会との連携、茶葉販売、体験イベントなどを組み合わせ、関係人口の創出と地域経済の活性化を目指す構想が提案されました。

本授業を通して、学生たちは、耕作放棄地や地域産業の衰退、災害復興、環境問題など、地域社会が抱えるさまざまな課題について理解を深めました。
また、自ら考えた地域活性化策と実際の取り組みを照らし合わせながら、それぞれの専門性や得意分野を生かし、事業や活動を通じて課題解決に取り組む意義を学びました。
本科目では、今後も科学と社会とのつながりを体験的に学ぶ授業を通して、地域課題を科学的な視点から考え、実践へと結び付けることのできる人材の育成を目指していきます。