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 【生涯学習】

《公開講座記録》【地域研究への招待】越境する芸術/食文化:英国ルネサンスのデザート用木皿にみる移入・伝播の過程

第4回 ● 平成27年7月4日(土) 午後1:00
テーマ ●  越境する芸術/食文化:英国ルネサンスのデザート用木皿にみる移入・伝播の過程
講 師 ●  山本真司 地域文化学科准教授

内容

本講座では、英国における宴会、特にバンケットというデザートの文化的背景を考察した。そこで使用されるバンケット・トレンチャー(以下、BTとして省略)という特殊なデザートコース用装飾木皿を通して、主にルネサンス期ヨーロッパにおける芸術文化の伝播について考察した。
 
1.英国ルネサンスのバンケット・トレンチャー
BTはシェイクスピア作品の中でも効果的に使用され、ルネサンスのバンケット文化において独自の位置を占めている。英国貴族や裕福な商人の間で木製のBTが流行したのは新年や結婚のお祝いの品として気軽に贈られるようになったためであろう。
 
2.イタリア:宮廷宴会文化の伝播
ルネサンスの宴会様式はイタリアの宮廷からはじまり、活版印刷の発展や宮廷料理人の移動によって徐々に北方に伝播し、ついには英国に伝えられた。イタリアの法学者アルチャートによって始められたエンブレムの伝統もBTの装飾の図案の一つとして採用された。また円形図案は相互にデザインを貸借しあっていた。特に中心に人物像を描いたトレンチャーの円形デザインは、イタリアで流行したトンドと呼ばれる立体装飾の大型円形額縁の影響を一部受けていると考えられる。また、象徴的図像が両面に描かれた結婚式の贈り物の丸盆の影響も考えられる。
 
3.オランダ:迫害された新教徒ユグノー移民の英国移住
BTの図像をデザインしたド・パッセはエリザベス女王やオルノーコの肖像画だけでなく植物図版やエンブレム図像の制作でも異彩を放っている。プランタン・モレトゥス印刷工房はルネサンス期に西欧世界最大級の印刷工場として発展したが、その工房で製作されたエンブレム本に使用された図版がBT図版の構図にも影響を与えただけでなく、当時スペインによって迫害されてイギリスに移住した低地諸国の優秀な彫刻師たちの作品や高度な技術の影響を受けていることが分かる。
 
4.アメリカ: 新大陸への伝播
米国東海岸の博物館にはイギリスから持ち込まれたBTが複数残されている。初期の植民者たちにとって割れにくく軽いトレンチャーは、数少ない貴重な娯楽や贈り物となった。BTの装飾として大きな位置を占める植物模様は、ひとつには新古典主義的な意味から古代ギリシャやローマの世界への憧れから付与された神話的寓話的な意味づけと同時に、新種の植物といったエキゾチックな対象への大いなる興味もあっただろう。
 
5.文化的社会的背景としての宝くじ
エンブレム本にも宴会の余興的くじ引き的要素を兼ね備えたものがあるが、BTも同様にエンブレム本とくじ引きの両方から影響を受けている。BTの使用方法に関してはまだ研究者の間でも議論があるが、これまでの調査では木盤の裏面にはほとんどデザート菓子や果物による汚れが見られないことから、デザート盆としての使用というよりは、①新年の贈り物として、②宴会後の余興として音楽やくじ引きの要素を取り込みながら利用されたことが推察される。またたとえ実際にデザート盆として利用された場合でも、イタリアの出産盆のように表面を布で覆って保護したであろう。
 
結論 道徳的な娯楽・嗜好品の視覚化と携帯性、贈り物文化、宝くじ文化の影響
このようにBTはノリッジやコルチェスターに移住したユグノー印刷工の影響だけでなく、イタリアやオランダ・ベルギーなどの低地諸国からのくじ引きなどの宝くじ文化的の影響や、エンブレム本やイソップ、植物の装飾デザイン、あるいは聖書の内容を分かり易い図と言葉によって表した新年の贈り物や宴会の小道具としても活用された。またBTに典型的なラウンデルという円形の形状はフィレンツェ地方の出産盆の影響を受けている可能性があり、さらにはミニアチュールやステンドグラス、コインやマジョリカ皿などルネサンスの様々な装飾文化からも多様な影響を受けたと考えられる。
 

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