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 【生涯学習】

《公開講座記録》【外国語への招待】外国語を習得するメカニズムって何だろう?

第1回 ● 平成26年9月27日(土) 午後1:00
テーマ ●  外国語を習得するメカニズムって何だろう?
講 師 ●  吉田 智佳 言語教育研究センター准教授

内容

 英語を学びたいと願う学習者を対象に、さまざまな「効果的な英語学習法」が提案されていますが、それらの方法の中には根拠がないものも少なくありません。たとえば、「聞き流すだけで外国語が話せるようになる」—皆さんはどのようにお思いになりますか?ここでは「聞き流すだけの方法」を以下の3点から考えます。

(i) 母語(=生まれてから最初に習得する言語)と第二言語(=外国語)を習得する際の違い

(ii) 気づき(noticing)

(iii) インプットの質と量

私たちは生まれてから両親など周りの人が話す日本語を聞くだけで、特に教えられることなく日本語を習得してきました。しかし、第二言語の習得の場合には同じようにはいきません。それは一つには母語と第二言語の習得の初期状態が異なるからです。赤ん坊が母語を習得するときには、脳はどんな言語でも習得できる状態であるのに対し、母語を習得してしまうと、母語がフィルターになり、そのフィルターを通して言語を習得することになります。この違いが母語と同じようには第二言語を習得できない理由ではないかと考えられてきました。今なお、どのような違いが習得の妨げになったり、逆に習得を促進したりするのはなぜなのかについて、さまざまな研究がなされています。しかし、「聞き流すだけの方法」では母語と第二言語の違いが重要視されていないようです。

次に「気づき(noticing)」の点から考えてみましょう。Schmidt (1990)は第二言語能力を伸ばすためには、特定の学習項目に注意を払い、意識すること、つまり、「気づき」が必要であると主張しました。さらに、それらの項目が表す意味や機能との関連に学習者が気づいたときに習得が可能となり、学習が進むと提唱しました。しかし、「聞き流すだけの方法」ではいかなる項目に対しても「気づき」は生まれません。なぜなら、注意を払わないからです。

最後に、次に学習者が受ける言語インプットの量と質の点から考えてみましょう。まず、言語インプットの「質」から検討してみましょう。日本のような言語環境で、第二言語学習者が受けるインプットは主に先生が話す外国語です。先生は生徒が理解できるような単語や表現を用い、ゆっくり話します。この点では赤ん坊に与えられるインプットと似ています。もし、インプットの質が言語習得に大きな影響を与えるのだとすれば、同じようなインプットを与えられる第二言語学習者も母語話者並みに第二言語を容易に習得できるはずです。そこで「どのようなインプットを与えれば第二言語習得がうまくいくのか」という研究がなされてきました。しかし、第二言語学習者は母語話者よりも「ゆっくりとしたスピードで話されないと理解できない」ということは報告されていますが、インプットの質に関しては未だ明確な結果は報告されていません。

次に「量」について考えてみましょう。母語習得の場合、赤ん坊が受ける母語のインプット量としては約17,520時間、一般的な日本人英語学習者が受けるインプット量は約2,190時間であると言われています。第二言語の言語インプット量は圧倒的に少ないですね。では、インプット量がもっと多い場合はどうでしょうか?イマ—ジョン(immersion)教育の環境では、1年間でインプットを受ける時間は7,000時間にも上ると言われています。その結果、イマ—ジョン教育を受けている学習者の英語運用能力は高く、リスニングテストの成績は母語話者並みだったと報告されています。その一方で、文法能力が不完全にしか発達していないこと、場面に適したことば遣いができないことが報告されています。

さて、「聞き流すだけ」の方法はどうでしょうか?インプットの時間を増やしても英語母語話者並みの英語力は身につかないことはイマ—ジョン教育の場合でも明らかです。つまり、「聞き流すだけ」の方法では母語話者と同じような英語能力は身につかないのです。「(聞き流すだけの方法で)英語力が伸びない」とは言っていません。宣伝広告では「英語が話せるようになる」という表現がよく使われます。しかし、その解釈はその広告の読み手(あるいは聞き手)に任されています。つまり、「英語が話せる」を「英語母語話者並みに英語を使うことができる」のか「外国人に道を尋ねられて教えてあげられる」程度なのか、到達度についての解釈はさまざまです。ですから、ある方法について効果があるのかを知りたい場合には、「どのような発達段階の学習者がどの程度の段階まで到達できるのかについて述べられているか」を調べることです。

公開講座の内容は吉田(2015)『外国語教育—理論と実践—第41号』にまとめましたので、関心のある方はそちらをご覧ください。

 

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