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 【生涯学習】

《公開講座記録》【「大和学」への招待】第1回 郡山周辺の中世石造物

第1回
●2019年9月14日(土) 午後1:30
●テーマ: 郡山周辺の中世石造物
●講師  山川 均 大和郡山市職員

内容

大和郡山市と所縁の深い叡尊(1201-90)と忍性(1217-1303)は、中世に律宗を再興したことで知られている。この2人の僧侶は師弟関係にあり、叡尊は西大寺(奈良市)の中興開山、一方の忍性は極楽寺(鎌倉市)の開山である。彼らの業績は広く知られているところであるが、近年その業績として、すぐれた作風の石塔や石仏の造立も加えることができることが知られてきている。

忍性と石造物 銘文等によって忍性との関係が明らかな石造物として、箱根山宝篋印塔がある。この石塔の落慶供養は、銘文によれば正安2年(1300)8月21日だが、この際、供養導師を務めたのが良観上人(忍性)であった。制作を担当したのは大蔵安氏と心阿という2名の石工であるが、この両名は親子であった。鎌倉長谷寺所在の宝篋印塔板碑は、心阿が父・大蔵安氏の十三回忌に造立したものである。さらに付記すれば、大蔵安氏の父にあたると思われる大蔵安清は貞永元年(1260)、額安寺(大和郡山市)に宝篋印塔を造立しているが、ここは忍性が出家した寺であり、3基ある忍性の墓の一つは、この額安寺に存在する。

またこれに先立つ正応5年(1292)、忍性は師僧・叡尊の三回忌を修するために西大寺に還住するが、この時期、瀬戸内において石造物の造立が盛んとなっており、その主な作者は上述の心阿であった。正安2年(1300)、忍性は叡尊に菩薩号が下賜されたことを契機に鎌倉に戻るが、その際に供養導師を務めたのが上記の箱根山宝篋印塔ということになる。箱根山精進池のほとりにはこの宝篋印塔の他にも多数の石塔や磨崖仏があるが、これらはおそらく忍性の指示に基づき、大蔵安氏(そしてその死後は心阿)が中心となって制作したものである。

さらに瀬戸内や箱根において盛んに石塔・石仏(摩崖仏)が造立されていた頃、大和の生駒山(生駒市)周辺においても多数の優れた石塔・石仏が造立されている。生駒山は忍性が生涯に亘って思慕した行基(668-749)の墓(竹林寺境内)がある場所であり、さらにこの竹林寺は、忍性の若い頃の修行の場である。そしてここには、上記した3基の忍性墓の一つも存在する(残る1基は鎌倉極楽寺に所在)。生駒山におけるこの時期の石造物の代表的存在である石仏寺阿弥陀三尊石仏(永仁2年[1294])の作者は伊行氏であり、こうした生駒山の石造物の多くは伊行氏の手になるものだと思われる。なお、大蔵安氏や心阿らを「大蔵派(石工)」、伊行氏ら「伊」姓の石工を「伊派(石工)」と呼ぶこともある。

忍性は嘉元元年(1303)7月12日に極楽寺で入滅するが、その5年後となる徳治3年の7月(忌月)に心阿が造立した鎌倉安養院宝篋印塔には「□観上人」の名が刻まれており、これを「良観上人」と読めば忍性のこととなる(その可能性は高い)。

叡尊と石造物 般若寺(奈良市)の中心的存在である十三重層塔は、建長5年(1253)頃に竣工したと考えられている。この石造層塔の造立は良慶という僧侶が熱心に進めてきたものであったが、良慶が叡尊の弟子になったことからその造立は西大寺によって引き継がれた。このとき叡尊が掲げた層塔造立(般若寺復興)の目的は、中世被差別民の救済である。また、石工は伊派石工の伊行末とその子・行吉であった。

それから30年余り後となる弘安8年(1285)、叡尊は兵庫津周辺の遊女救済を目的に、逆瀬川十三重層塔を造立する。また翌弘安9年には宇治川の漁民救済を目的に宇治浮島十三重層塔を造立した。これは、前世に遊女として人心を惑わせ、また漁民として殺生を重ねたことが、今生において被差別民となった原因だとする中世仏教の「因業観」に基づくものである。叡尊が般若寺十三重層塔造立の頃に有した被差別民救済思想は、その数十年後にはその根源(前世)に遡ってそれを改めるべきだ、という方向に進んだことを伺わせる。

以上のように石造物からは、文献からは伺い知ることができなかった高僧の活動やその背後にある思想を伺い知ることが可能である。またこうした研究はまだ緒についたところであり、今後の進展が大いに期待される分野である。

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