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 【生涯学習】

《公開講座記録》【地域研究への招待】第2回 現代ロシアの少子高齢化

第2回
●2019年6月22日(土) 午後1:30 
●テーマ: 現代ロシアの少子高齢化
●講師  五十嵐 徳子 地域文化学科教授

内容

ロシアでは、1991年のソ連の解体前後、出生率が1.9から1.3人下がるというショッキングな数字に直面した。それに呼応して、ロシアの人口は激減した。ただ、人口学者のエマニュエル・トッドが指摘するように、これはロシアだけの問題ではなく、先進国では少子化は運命付けられており、ロシアも遅かれ早かれ少子高齢化社会になっていたであろう。

ただ、先進国では、医療技術の進化により高齢化も進んでいるが、ロシアでは、出生率の低下のみならず、死亡率が高いことが特徴的であった。ここまで書くと、ロシアには少子化問題はあっても高齢化問題はないのではないかと思われるかもしれない。2017年の日本の高齢化率が27.7%なのに対してロシアは14.6%であり、数字だけを見ると、ロシアの高齢化はそれほど進んでいるわけではなく、むしろ早死にである。事実、1990年代に男性の寿命が60歳に届かないこともあった。2017年でも男性の寿命は約65.92歳であり、確かに先進国としては寿命は短い。しかしいくら早死にの国ロシアでも寝たきりで介護が必要な高齢者はたくさん存在している。これまで可視化されることはなかったが、徐々に高齢化ケアに関する重要性は認識されつつある。

少子化かつ死亡率の上昇により人口が減少したことに対応するために、プーチン大統領は2005年の演説で、人口問題を「1990年代には手が回らなかった問題、差し迫った問題」と語り、2006年の年次教書では、ロシアが抱えている人口問題を解決するには、死亡率の減少、効果的な移民政策の実施、出生率の上昇が不可欠であると述べ、人口問題に真剣に取り組む姿勢を見せた。

少子化高齢化問題のうち、少子化問題に関してはロシア政府も非常に力を入れて取り組んできた。2007年には、人口動態の危機を脱するため、「ロシア連邦2025年までの人口動態政策理念」を出し、産めよ殖やせよの家族政策が始まる。具体的には、子どもを産み育てる環境の整備を行うとともに、伝統的・保守的な価値観の普及を行っている。子どもを産み育てる環境整備としては、 財政的な支援、保育園、学童保育、サマーキャンプなどの充実である。また、家族を中心とした伝統的・保守的な価値観の普及にも力を入れている。特に、出生率の上昇のために政府が最も力を入れてきたのが、新たな育児手当「母親基金」の創設。2007年1月1日から2016年12月31日までに生まれた2人目以上の子(養子を含む)に対して25万ルーブル(当時約112万5千円) 支給されるというものであった。出産時に現金支給されるのではなく、子どもが3歳になった際に、(1)住宅の資金として、(2)教育資金として、(3)母親の労働年金の資金として支給される。支給額はインフレスライドするときめられた。これは現在でも続いており、2021年末まで延長されている。家族の価値の普及では、大家族の奨励など国を挙げて行っている。

一方、高齢化問題に関しては、これまであまり力を入れてこなかった。実際に数年前までは、ロシア人にロシアは早死になので高齢化の問題などないとさえ言われてきた。ロシアでも高齢化率は2050年には現在の日本のレベルになると予想されている。しかし、ロシアでは家族介護が基本であるために特に介護を担っている女性の負担は大きい。ロシアの高齢化介護の状況は日本の介護保険制度導入前の状況であると感じる。本発表では、筆者の現地調査の結果を中心に現在のロシアの少子高齢化問題について明らかにしている。

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