天理大学

  1. HOME
  2. ニュース・トピックス
  3. 《公開講座記録》【人間学で読み解く現代社会】第2回 社会福祉から福祉サービスへ —新自由主義改革と社会福祉—
 【生涯学習】

《公開講座記録》【人間学で読み解く現代社会】第2回 社会福祉から福祉サービスへ —新自由主義改革と社会福祉—

第2回 ●2019年4月27日(土) 午後1:30
テーマ ●社会福祉から福祉サービスへ —新自由主義改革と社会福祉—
          ●講師  深谷 弘和 人間関係学科講師

内容

1.福祉サービスの今-福祉サービスの多様な担い手-

現在、私たちに福祉を提供してくれる担い手は多様になっています。国や自治体、社会福祉法人といった従来の担い手に加えて、NPO法人などの市民団体や、株式会社などの企業も福祉サービスを提供するようになりました。厚生労働省(2017)によると、社会福祉施設の実施主体の割合は、公営が23%、社会福祉法人が38%、医療法人が3%、営利法人が26%、その他の法人が9%という内訳になっています。営利法人やその他の法人が約3分の1を占めています。こうした変化の中で、近年では「社会福祉」という表現に加えて、「福祉サービス」という表現が使われる機会が増えてきました。

2.社会福祉の発達過程

このような社会福祉の変化をとらえるために、現代社会までの社会福祉の発達過程を確認してみます。
社会福祉の成立は、近代社会への移行にみることができます。近代社会とは、個人の権利や自由が重視され、宗教的観念よりも科学的合理性による観念が重視される社会です。市民革命や産業革命によって、商業活動が拡大すると、一部の民衆は、都市に出て工場労働者となり、新たな富を得た富裕な民衆が生まれます。工場労働者たちの中には、景気の動向や戦争や災害などの非常事態によって、あるいは、疾病や障害、高齢などを理由によって、失業の危険性を有します。もし、失業し、貨幣を獲得できないと、市場で商品を購入できず貧困が生まれ、それを理由とした騒乱や犯罪行為によって社会の維持が困難となります。このような矛盾を個人の問題ではなく社会問題として捉え、その問題を社会的に解決しようとする仕組みとして「社会福祉」が誕生することになります。
社会福祉は、第二次世界大戦後の先進国で大きく発展します。イギリスでは、「ゆりかごから墓場まで」という言葉に表現されるように、国家が国民の生活を保障していこうというナショナル・ミニマムの考えにより福祉国家体制が整備されます。日本でも戦後の高度経済成長を背景にして、児童福祉、高齢者福祉、障害者福祉などが整備され、国民皆年金・皆保険などの政策が実現していくことになります。
しかしながら、1970年代に入って、オイルショックを経験した先進国は、経済の低成長期に入り、少子高齢化を経験する中で、福祉国家体制の見直しを迫られることになります。

3.新自由主義による福祉国家体制の見直し

福祉国家体制を見直していく際の視点として提示されるのが新自由主義の思想です。植民地支配をおこなっていたイギリスの重商主義を批判したアダム・スミスの思想を自由主義と呼びますが、同じように、国家による過度な介入をおこなう福祉国家体制を再検討する思想として、新自由主義が登場しました。具体的には、「大きな政府から小さな政府へ」と言われるように、政府が必要以上に個人の生活に介入せず、福祉国家体制で構築してきた社会サービスを民営化することで、国民が硬直したサービスではなく、選択肢に恵まれ、競争原理によって安価なサービスを受けることができるようにしていくことを目指します。代表的なものがイギリスのサッチャー政権による改革があります。日本でも、オイルショック以降、「日本型社会福祉論」が提起され、「社会福祉基礎構造改革」がすすめられました。少子高齢化や、核家族化といった中で福祉サービスを必要とする人が増えると共に、そのニーズが多様なものとなり、福祉サービスの供給体を増やすための規制緩和がすすめられてきました。代表的なものに2000年の介護保険法があります。児童福祉や障害者福祉でも、それまでの措置制度から契約制度が導入され、行政による福祉の実施が縮小され、民間による福祉サービスの提供が拡大していき、現在の「社会福祉から福祉サービスへ」という現状に至っています。

4.今後の社会福祉の展望

「失われた30年」とも呼ばれるように、オイルショック以降の経済の低成長は、バブル崩壊やリーマンショックなども経て、現在にまで尾を引いています。それによって生活保障を必要とする人たちが増加し、一連の改革によって格差が拡大し、社会の分断も大きくなっています。「社会福祉」のあり方を今一度振り返ってみると、それは社会の安定と維持、人々のつながりを生み出す仕組みといえます。民営化がすすみ、民間の活用が推進されるなかで、どのように社会のつながりを再構築できるのかが、今後の社会福祉を担う人たちに期待されているといえます。

クラブ・サークル

広報誌『はばたき』

メディア出演・講演情報・教職員の新刊案内

シラバスを見る

情報ライブラリー

学術情報リポジトリ

iCAFé_

附属天理図書館

附属天理参考館

附属おやさと研究所

学校法人天理大学

天理大学の自己点検・評価活動

寄付のご案内

このページの先頭へ