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 【生涯学習】

《公開講座記録》【人間学で読み解く現代社会】第4回 今日にみる「心理」について

第4回 ●2019年5月18日(土) 午後1:30
テーマ ●今日にみる「心理」について
          ●講師  高月 玲子 人間関係学科教授

内容

Ⅰ.現代日本における「心理」をめぐる状況

昨年、国家資格である公認心理師が「国民の心の健康と保持増進に寄与すること」を目的として誕生した。心理に関するもう一つの資格は民間資格の臨床心理士である。資格発行体と目ざすところに違いはあれ、両者は共に「心」に関与し、心理的支援に取り組む資格である。30年を越える臨床心理士による取り組みには、個人レベルでのカウンセリングや心理療法は勿論のこと、社会の側からとらえると、医療、教育、社会福祉、司法等現場の最前線での活動がある。例えば、スクールカウンセラー、災害や事故後の心のケア、犯罪被害者支援、遺伝カウンセリングや不妊カウンセリング等々多岐にわたる。資格制度の成立と発展は、このような社会の様々な枠組ごとの心理的支援の要請を高まりと深く関連しているのである。

これら心理的支援に共通した方向性の一つに支援のサービス化があげられる。ここで言うサービスとは、困っていることや要望に対して行政ができることを国民、市民に提供することである。この点は、来談者が自分自身で必要性を感じて来談し、セラピストは助言や指示ではなく、その人のあり方を受容し、心の変容を見守る場を提供する、という心理療法本来のあり方とはかなり異なっている。この違いに着目しながら、今日の「心理」について考えてみたい。

Ⅱ.心理療法の成立過程と現代の連続性と不連続性

『無意識の発見』の著者エランベルジェは、今日の心理療法の遠祖を原始宗教の一要素であるシャーマニズムに見いだした。心身の変調は呪術的にとらえられ、シャーマンをシャーマンとして成立させるには共同体による世界観と文化の共有が前提であった。そして、例えば心身の変調は霊魂が行方不明になったためであり、魂の所在を突き止め招魂し、魂をもとに収め戻す治療が施されたように、当時の疾病観と治療観には因果的思考の初期形態が認められる。今日、さすがにこのような初期形態は取っていないものの、因果的思考は現代社会において必要不可欠な思考法となっている。

一方で、19世紀末、神経症という疾病概念の確立によって心身は別々にとらえられ、共同体をベースにするのではなく個人の心に焦点があてられ、近代以前と近代の治療観、人間観は大きく変化し、現代に到っている。

Ⅲ.もう一つ心理の考え方(ロジック)について—人間中心から、心中心へ

フロイトによる「無意識」という考え方や、人間に本来そなわる心のはたらきをとらえようとしたユングによる「個人的無意識」、さらに「普遍的(集合的)無意識」と元型という考え方については臨床心理学に興味を持つ方にはご存じの方も少なくないであろう。ここでユングによる因果的思考への懐疑を取り上げたい。因果関係が成立には、出来事の間に時間的な前後関係が前提とされる。つまり、因果関係で結ばれている二つの事象は、時間的に同時ではあり得ない。逆に言えば、時間的に同時な二つの事象は、因果関係で結ばれることはあり得ない。因果関係が認められない場合は偶然で済まされてしまう。ユングが体験した心理療法の過程で生じた現象に、偶然では済まない治療的意義を見いだそうとし、非因果的連関の原理-「共時性」に行きついた。時間的に同時な二つの事象の間に、因果的でないような連関があり得るとユングは考えたのである。因果論を越えようとしていた現代物理学の研究者パウリとの出会いがこの考え方の深化を後押しした。1950年のことである。そこから半世紀以上経た、現代を生きる私たちにとってなじみ深い因果論的発想から解放されることは不可能なのだろうか。

これらユングの思想に深く根ざしているのは、人間の心といった人間を中心におくのではなく、あくまでも心を中心とした心理観ではなかっただろうか。この姿勢は、国民のため、市民のための心理支援が求められる現代をとらえる上で示唆に富んでいると思われる。そして、人口に膾炙することはまずないとも思われる。しかしながら、現代社会が必要としているのは、目立たない心の生命の声を聴くこと。内なる耳を澄ませることであるように思う。

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