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 【生涯学習】

《公開講座記録》【人間学で読み解く現代社会】第3回 動物保護の日独比較—人間と動物との共生を目指す社会を目指してー

第3回 ●2019年5月11日(土) 午後1:30
テーマ ●動物保護の日独比較—人間と動物との共生を目指す社会を目指してー
          ●講師  浅川 千尋 総合教育研究センター教授

内容

日本の動物保護の現状は、年々減少しつつあるとはいえ犬猫の殺処分が約5万匹・頭行われている等まだまだ課題が山積している。日本で本格的な動物保護に関する法制度は、江戸時代の五代将軍綱吉の生類哀れみの令である。すべての生き物の殺生を禁じるという内容で、とくに犬を保護したことで有名である。その一方で、江戸市民に重税を課し、動物(とくに犬)を殺めた者は厳しく罰せられた。そのためこれまでは、悪法であったというのが通説であった。近年評価の見直しがされ、社会福祉政策を含む内容で17世紀後半にこのような法制度があったことは世界的にも先進的であるという説が有力になってきている。

明治以降、動物保護法制度はほとんど展開がなかったが、1973年に議員立法で「動物保護管理法」が制定された。ただし、13条からなる小法律で不十分な法律であった。その後、ペットを飼う人が増加し、その反面犬猫等を虐待し遺棄する例が増加するなかで、議員立法として動物保護管理法の改正が行われ、1999年に「動物愛護管理法」が制定された。当初は31条であったが2回の法改正を経て50条からなる法律になっている。第1条では、目的として人間と動物との共生という理念も盛り込まれている。動物取扱業者(ペットショップやブリーダー等)は、届出制であったが、2005年の改正で登録制になっている。違反者には、知事の改善命令などが出せる。動物殺傷等に対する罰則は、動物保護管理法のときよりずっと強化されている。

2012年の改正では、本則に「8周齢規制」が盛り込まれ、罰則もより一層強化された。動物殺傷罪は、懲役2年以下又は200万円以下の罰金、動物虐待・遺棄罪は、100万円以下の罰金が科されることになった。それ以外、飼い主責任が強化され飼い主の終生責務が盛り込まれている。ただし、「8周齢規制」は、ペット業界等からの強い要請があり附則で当面3年は45日、2016年9月からは49日となっている。

近年、犬猫の殺処分をできるだけ少なくしていき0にしていく活動が展開されている。その活動にとって、地域猫の活動は重要である。この地域猫は、横浜市のある地区で1999年から始まった活動で、地域で野良猫の面倒を見る活動である。地域猫ボランティアが食事や水を与え、不妊手術を行い糞尿の処理をする。この活動によって、救える命を救いまた野良猫が減って行っている。地域猫の大学版である大学猫の活動もいくつかの大学で行われている。

動物実験に関しては、動物愛護管理法第41条に定めがあるが、倫理的な内容でしかなく実効性に欠けている。実験施設の自主規制・自主管理によって、動物実験が行われているのが現状である。化粧品等の開発のための動物実験は、動物保護団体等の反対・不買運動で大手化粧品会社では実験の中止がされているにとどまる。

このような日本の現状と比べると、ドイツでは、本格的な動物保護法が1933年に制定され、その後1972年に連邦全体に及ぶ動物保護法が制定され何度か改正され現在に至っている。1986年の法改正で「人間の倫理的責任としての動物保護」という理念が導入された。また、動物保護法によれば動物取扱業者や動物実験施設は許可制である。合理的な理由のない動物殺害は禁止されており、また殺害する場合には麻酔等を用いなければならない。動物実験は、不可欠で倫理的な方法でしかすることができない。また、主務官庁による許認可が必要である。ドイツでは、2002年にEUで初めて憲法に「動物保護」規定が導入された。この規定は、国家目標規定である。日本の一部で散見される「動物の権利」が導入されたわけではない。
ドイツの動物保護に関して、大きな役割を果たしているのがティアハイムである。ティアハイムは、200年前以上から全国に広がっている民間の動物保護施設である。ドイツ連邦動物保護同盟の傘下にあり、500以上のティアハイムが運営されている。ティアハイムでは、多くの動物が保護されており、この施設から犬や猫などを貰い受ける市民も多くいる。飼い主が見つからない動物は一生施設で過ごせる。動物に関する政令(たとえば「犬に関する政令」)も制定されており、多層的な動物保護法制度が存在している。

日本では、2018年から「動物愛護管理法」改正が議論されているが、ドイツのような法制度には遠く及ばない内容である。人間と動物が共生していける社会を目指すうえで、どのように動物保護法制度を充実させるかは大きな課題である。

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