天理大学

  1. HOME
  2. ニュース・トピックス
  3. 《公開講座記録》【人間学で読み解く現代社会】第1回 大学公開講座で学ぶ貴方へ-大学開放の歴史と「学び」の考え方-
 【生涯学習】

《公開講座記録》【人間学で読み解く現代社会】第1回 大学公開講座で学ぶ貴方へ-大学開放の歴史と「学び」の考え方-

第1回 ●2019年4月20日(土) 午後1:30
テーマ ●大学公開講座で学ぶ貴方へ-大学開放の歴史と「学び」の考え方-
          ●講師  佐々木 保孝 人間関係学科准教授

内容

大学の機能には教育・研究があるとよく言われますが、生涯学習の観点からは、知的資源を広く社会に開放する「大学開放」と呼ばれる第三の機能が重要で、本日お越しいただいた大学公開講座も大学開放の具体的な活動の中に含まれます。近代の大学開放は、欧米でユニバーシティ・エクステンション(University Extension)という呼ばれ方で始まりました。私はその成立史を研究テーマにしていますので、配布資料に沿って、歴史的な経緯や事象を俯瞰していきたいと思います。

近代に入って大学を学外の市民に開こうとしたエクステンションの試みは19世紀後半のイギリスで始まりました。背景には大学改革運動がありました。オックスフォード、ケンブリッジという2つの伝統的な大学は宗教的・階級的コミュニティでもあり、その要件を満たさない者に門戸を閉ざしてきたのです。しかし、産業革命を経て中産階級・労働者階級が勃興するなかで、これまで大学教育の恩恵に与ることのなかった層の教養的な知に対するニーズの高まりに大学がいかに応えていくのかという問題意識をもった人物が歴史の舞台に登場してきました。オックスフォード大学のスチュアート(Stuart, J.)はその代表で、イギリスの主要都市を大学の講師団が巡回講義をするという枠組みを大学当局に認めさせ、エクステンションの活動に着手したことで知られています。1873年のことです。スチュアートは一般の大学教育水準に見劣りしない講座のレベルにすることをうたっていたため、12回という講義の連続性を確保して課題論文や終了試験を課し、クリアした者には修了証を授与するというやり方を考案しました。20世紀に入ると、ユニバーシティ・エクステンションは労働者階級への浸透を目指して、労働者教育協会(Workers’ Educational Association)と連携し、学習支援のためのチュートリアル・クラスといった方式が編み出されました。1920年代には大学の中にも構外教育部が設置され、ユニバーシティ・エクステンションの組織化が一定の完成をみる次元に至ります。

アメリカ合衆国では、イギリスのような階級的な閉鎖性の打破という背景よりも、生活のなかで生じる課題が多様であったことを踏まえて、どちらかといえば実利的なニーズに大学の知をいかに活用できるのかという観点が重視されました。世紀転換期から20世紀初頭にかけて、例えば、農業の分野ではフロンティア・ラインが西海岸に到達した後の農業のあり方を科学化や機械化の波にのせながらを変革させることが課題でした。そのため、主に国有地付与大学の農学部に農事試験場や一般農民への知識の普及を担うエクステンションの部局が設置されていくことになります。ちなみに、農業分野のエクステンションは、連邦法や州法に基づいて公的に制度化が図られた点も注目されるところです。農業以外の分野でも、政治や経済の面等で社会科学の活用による新しい体制や運営が求められ、そこに大学の知(知識人)がエクステンション活動を通じて応えていきました。中でも、ウィスコンシン大学のヴァン・ハイス(Van Hise, C. R.)学長は、大学が有する知的資源でもって州民のあらゆるニーズにサービスしていく方針を積極委的に理念(idea)として打ち出しています。

総括的に言えば、イギリスの場合、教養教育を軸に据え、正規の教育課程を時空間的に拡張しようとするものであったのに対して、アメリカは、大学の知的資源を学外のニーズに合わせてあらゆるかたちで提供するやり方を発展させました。その歴史的な経過においては、英米のケースに共通して、既存の大学像の問い直しと当該社会の構造に鑑みた大学の社会的役割に関する再定位がなされているのですが、それがある程度の成功をみていると評価できるのは、教育・学習の主導性という観点で考えた時に、学習者の側がエンパワーしながら実践の主役となっていく過程が見て取れるからであります。これには、学習機会の構築の過程に学習者が参画するような仕組みづくりを試行錯誤していたことが大きく影響しているわけですが、出来合いの知を承るような旧来の学習スタイルを一般の市民が脱していく歴史的事象の中には、現代の我々が自らの学びを顧みるヒントが隠されているように思えてなりません。

クラブ・サークル

広報誌『はばたき』

メディア出演・講演情報・教職員の新刊案内

シラバスを見る

情報ライブラリー

学術情報リポジトリ

iCAFé_

附属天理図書館

附属天理参考館

附属おやさと研究所

学校法人天理大学

天理大学の自己点検・評価活動

寄付のご案内

このページの先頭へ