考古学・民俗学専攻 小田木治太郎 教授
小さなガッツを持って 楽しみながらチャレンジを
今後は視野を広げて研究を

現在の研究テーマは、中国北方青銅器文化の研究。中国には農耕を基盤とする中国文明が発展した周辺に騎馬民族がおこり、中国文明と対峙した。特にその青銅器時代(紀元前7世紀~3世紀ごろ)の文化や、騎馬民族と漢族との関係を明らかにしたい。
学生時代は日本の古墳時代の土器の研究をしていた。古墳時代になると土器が広い範囲で共通性を持つようになる。日本列島に初期国家ができた証だ。その共通の土器様式は「布留式土器」と呼ばれ、天理市布留遺跡が名前のもとになっている。最初の就職先の天理参考館では布留遺跡を思う存分発掘したいと思っていたが、「中国考古美術」の担当になり、その後偶然が重なって、中国考古学を研究し続けている。
天理参考館から天理大学に移り、中国考古学に限らず、大学の周辺の杣之内古墳群の調査研究も始めた。今後は中国北方から日本という広い視野の研究を進めたい。
自分の性に合っている考古学
考古学を学ぶことは大学入学前から何となく決めていた。大学では当時は2年生から専門分野を学ぶカリキュラムだったが、1年生のときに考古学の先生の研究室に押しかけて行った。そのとき最初に読むように薦められたのが『日本考古学概説』(東京創元社)だった。旧字が多く四苦八苦したが、漢和辞典と首っ引きで、ノートを取りながらたっぷり時間をかけて読んだ。この本から得た知識が私の骨格になっている。学生時代は素晴らしい先生に出会えたと思う。今でも、事有るごとに教えを請うている。
考古学のフィールドワークは繊細な作業もあれば力仕事もあり、頭と体と五感をフル稼働させる。各現場での工夫も大切で、そこが腕の見せどころだ。それは楽しかったし、今も楽しい。自分の性に合っていた。
考古学を等身大で受けとめて
考古学は人が残した痕跡をもとにいろいろ考えるので、今の自分たちと比べてどうかを考えることは多い。学生には考古学を自分から離れたところにある知識ではなく、等身大で受け止めてほしい。そうすると、考古学を通じて考えたことがほかの場面にもどんどん活かせると思う。でもこれは、案外ほかの研究分野でも同じかも知れませんね。
小さなガッツをもって楽しみながらチャレンジを
天理大学生に限らず私自身の反省でもあるが、自分の枠はここまでと線を引いている人が多いように思う。いきなり大きな夢を実現することは難しいが、身近にある少し難しい挑戦を積み重ねていけば、気づかない間に思いもしないところにステップアップしているというものだ。どうせなら、それを楽しみながらやってしまえばいい。
枠にとらわれず、小さなガッツを持っていろんなことにチャレンジしてください。
プロフィール
小田木治太郎(おだぎ・はるたろう)
奈良県出身。
富山大学人文学部卒業。 富山大学大学院人文科学研究科修了。 文学修士。
1990年天理大学附属天理参考館学芸員を経て2009年4月本学着任。
日本中国考古学会幹事。