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 【宗教学科】

宗教学科 オリジナルコラム−同性婚をめぐる米国の動向と背景(2013年7月7日号)

 6月26日、米国連邦最高裁は、同性婚の権利を容認する初めての判決を下した。米国ではすでに10年ほど前から、州法のレベルで同性婚を認めるか否かについて、市民を巻き込んだ議論が活発化していた。
 
 たとえばカリフォルニア州では、1度は州法で同性婚が容認されたものの、その後の住民投票によって再び禁止されるなどの曲折を経ていた。
 
 また連邦法でも、1996年に制定された「婚姻擁護法」によって、「結婚は男女間に限る」と規定されていた。
 
 今回、連邦最高裁判決は、同性婚カップルの権利を否定するこの婚姻擁護法を「違憲」と判断したのである。
 
 同性婚容認の動きは、実は米国のみならず、欧州や南米でも近年、急速に広まっている。宗教史的に見て興味深いのは、こうした動きが、プロテスタントを背景とする北欧諸国はもとより、南欧や南米諸国など、伝統的なカトリック国においても着実に広がっているということである。
 
 こうした広範な動向の背景には、もちろん人々の意識の変化がある。それはいわゆる性的マイノリティー(少数派)の問題だけではなく、人間の価値観やライフスタイルそのものに多様性を認めようという寛容、あるいは包摂の精神の現れとも言えるものである。
 
 もちろん、さまざまなマイノリティーに対する差別は、世界的にはいまだ根強く残っており、ネット空間では他者への誹謗中傷が蔓延している。
 
 しかし一方で、近年の人文科学では、そうした排他的な姿勢は、自分もまた「認められたい」という“承認欲求”の裏返しだともいわれている。実際に、ネット世代の若者が重視する価値観の一つは、「正義」よりもむしろ「公平性」だといわれているのは示唆的である。
 
 いずれにせよ、ますます多様化する価値観やライフスタイルを、これまで批判的に捉えてきた保守的なキリスト教会にとって、こうした動向は新たに突きつけられた課題である。特に、この30年ほど「保守回帰」の傾向が顕著に見られた米国の宗教情勢は、今後大きな変容を経験していくことになるだろう。
 

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