【教員コラムNo,19】VUCA時代に思う
「答えがわからないところに佇む高齢者ケア」 2025.09.22 医療学部看護学科受験生の方へ在学生の方へ在学生保護者の方へ受験生の保護者・高校教職員の方へ地域社会とつながる # 看護学科# 教員コラム

現代社会は「VUCA(ブーカ)時代」と言われて久しいのですが、私たちはどのように対峙すればいいのでしょうか。                                         VUCA(ブーカ)とは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字で、物事の不確実性が高く、予測が困難な状態を表しています。VUCA時代においては、変化が激しく予測が難しい環境に適応できる人材が求められています。これまでの固定的な思考や手法では通用しないため、新たな課題に対応できる能力が不可欠であると言われています。 

とても難しいのですが、私は、高齢者ケアはVUCA時代の対応と共通するものを感じています。                                           高齢者は、少しのきっかけで病状が変化します(変動性)。高齢期は、死を見据えた人生の統合期ですが、多くの喪失を体験し自分自身の存在価値を見失いがちな不安定な時期でもあります(不確実性)。高齢者ケアは、病気だけでなく、身体や認知機能の低下など加齢による変化、家族、経済状態など、多様な課題があります(複雑性)。さらに、高齢者を理解するには、生きてきた時代背景の違い、長い年月をかけて身につけた生活習慣や価値観など様々なことが絡み、わからなさがつきまといます(曖昧性)。このような中、高齢者ケアでは“本人が望む生活とは何なのか”を追求するのですが、正解・不正解という明確な答えは出せず「答えがわからないところに佇むケア」があると言われています。そこで、VUCA時代に求められているように、予測が難しい高齢者の課題に対応できる力を培うことが必要になるのです。                                       

今年度も秋の臨地実習が近づいてきました。学生は、わからなさを抱えて高齢者と向き合うのですが、佇むことを大切にした実習を通して、人生を生き抜いてきた高齢者の様々な力を実感していきます。そして、高齢者とともにケアを創造していきます。                      

わからないこと、不確実なことと向き合うのは苦難を伴いますが、VUCA時代はチャンスの時とも言われています。私自身も、学生とともに佇む時間を楽しみながら、新たな展望につなげられるようにしたいと思います。

執筆者(医療学部・看護学科  田中真佐恵・講師)

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