
史文会は、歴史文化学科・歴史学コース(旧・専攻・研究コース)の教員や卒業生などを中心に組織された研究会であり、毎年1回、研究発表と総会を行っています。2025年度は、6月8日に開催されました。
本年が天理大学の創立100周年にあたることをふまえ、吉村綾子さん(2001年度卒、年史編纂室)に「『天理大学百年史』編纂で見えてきたもの」と題してご報告いただきました。報告では、4月に刊行された『天理大学百年史』の編纂過程を整理し、教職員や学生の学校史への関心を高めるため、ホームページでのコラム掲載やキャンパスヒストリーツアーの実施などの取り組みが紹介されました。あわせて、学史資料の蓄積・整理、クラブ活動の記録、大学の出来事の集積の重要性にも触れられました。また、刊行後の資料の取り扱いや、大学史の継続的な編纂の必要性についても強調されました。
つづいて、澤井廣次さん(2007年度卒、天理図書館)による「添下郡中山村大渕池の開発と権益争論」と題する報告がありました。報告は、2021年に大木博さん・北野清隆さん(いずれも昭和49年3月に外国語学部イスパニア学科を卒業された本学OB)からの依頼により、中山町の自治会文書を目録化した経緯から始まりました。調査の結果、従来の定説では、大渕池は元禄5年(1692)に4か村が造成を計画し、元禄14年(1701)に今井屋善五郎が完成させたとされていましたが、詳細な史料検証により、実際には郡山藩が費用を全額負担し、元禄14年に完成させたことが判明しました。この通説は、明治期の大渕池訴訟を背景に形成されたものであることも明らかになりました。報告では、歴史的事実の再検証と史料の継承の重要性が強調されました。
なお、調査を依頼された大木さん・北野さんも当日会場にお越しになり、地域の具体的なお話を交えつつ、澤井さんの丁寧な調査に対し感謝の言葉を述べられました。(幡鎌一弘)