天理大学客員教授の中江有里氏が特別講演を行いました 2024.10.28 人文学部国文学国語学科受験生の方へ受験生の保護者・高校教職員の方へ附属天理図書館6つのCONNECT

10月23日、天理大学人文学部国文学国語学科特別講演として、天理大学客員教授である中江有里(女優/作家/歌手)氏が、「『他者とのつながり』を考えるための読書」と題した講演を行いました。

講演の冒頭、中江氏は昨年に続き天理大学附属図書館2階講堂にて開催されたことに触れ、「私にとって年に一度のこの講演は特別な一日で、とても歴史のある図書館で今年もお話できることに感謝しています。学生の皆さんに何かひとつでも心に残るような講演にしたいと思います」と話しました。

中江氏は、本学の創設100周年コンセプト「「つながる」を、始めよう。」から、この日の講演タイトルを「『他者とのつながり』を考えるための読書」に設定したと説明し、「『読書でどうやって人とつながるのか?』について考えてみたい」と話しました。

本題のはじめに中江氏は、学業や課外活動で忙しい学生たちに、「ダンスの練習を毎日欠かさず行うように、少しでもいいので本も毎日読むことが大切。そうすることで考える状態を保つことができる」と語りました。

また、自身が最近書店で見つけた本、『よむよむかたる』(朝倉かすみ著)と『小説にできること』(藤谷治著)を手に取って読みどころやその一節を紹介しました。そして、「自分が大事だと思ったところや感動したところなどに付箋をつけながら読むと、振り返ることができる」とおすすめの読み方も紹介しました。

続けて、読書することで得られるものは読解力に留まらず、小説なら登場人物をとおして少し先の人生や危機的な場面などの疑似体験ができること、また読書空間は居場所づくりになることにもつながり、様々な本を読むことで善悪だけでははかりきれないものへの許容ができるようにもなると伝えました。

「読書でどうやって人とつながれるのか?」のメインテーマでは、「ことば」はコミュニケーションのツールであると同時に、自分をけん引してくれるものと説明しました。そのためには、「ただ読むのではなく能動的に読むことが大切。そうすることで書かれていることと向き合える。それはつまり自分と向き合うことである」と述べました。

「読書することで常に自分自身を感じることができ、他者への共感も育むこともできる。これが人とつながるためには必要なことではないか」と学生たちに自身の考えを伝えました。また、能動的に読むために「書評といった長文を是非書いてみてほしい」と学生たちに促されました。

講演の途中には、初めて中江氏の講演を聴講する学生たちに向けて、自身の新著『愛するということは』の制作エピソードを紹介しました。学生たちは普段の授業では聴くことのできない作家から語られる貴重なエピソード一つひとつに真剣な眼差しで聞き入っていました。

講演の最後、中江氏は学生たちに向けて「これまで読んだ様々な本によって支えられ、今の自分がいると思っている。読書にはとてもたくさんの可能性があるので、今日のお話が皆さんの読書へのきっかけづくりになると嬉しい」と語りました。

講演後の質疑応答では、参加した教員や学生から執筆に関する質問などが寄せられ、中江氏は穏やかな眼差しで質問を聴き、具体的な内容を盛り込んで丁寧に答えました。

中江有里氏略歴

女優・作家・歌手。1973年大阪府生まれ。法政大学卒。
89年芸能界デビュー。NHK 朝の連続テレビ小説『走らんか!』ヒロイン、映画『学校』などに出演。
NHK BS2『週刊ブックレビュー』で長年司会を務めた。
著書に小説『愛するということは』(新潮社)、『万葉と沙羅』(文春文庫)などがある。
読書好きで知られ、本にまつわる講演やエッセー、書評を多く手がける。
歌手としては、アルバム『La Chaleur-ラ・シャルール-』などをリリース。文化庁文化審議会委員。2018年4月天理大学客員教授に就任。

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