パーキンソン病は、脳の神経伝達物質ドーパミンの減少により手足の震えや筋肉のこわばりなどが生じる進行性の指定難病です。私は以前、家に閉じこもりがちだった高齢者で、この病を患うAさんと出会いました。Aさんは「こんな風に手が震えるんですわ」と震える手を見せながら、月2回の「まちの保健室」や仲間との交流を明るく語ってくれました。さらに、認知症の夫と毎朝ウォーキングをし、押し車で買い物に行くという彼女は、かつて何年も閉じこもっていたとは信じられないほど活動的でした。

彼女が外に出るきっかけを作ったのは、地域の看護師たちでした。専門医への受診を促すことで症状が和らぎ、さらに看護師が中心となって立ち上げ健康についての勉強会や体操、音楽など様々な活動を行う「まちの保健室」へとAさんを連れ出したのです。そこで同じ病の仲間と出会い、悩みを共有できたことが大きな支えとなりました。
しかし、本当の意味で彼女の行動範囲を広げたのは、夫の認知症発症でした。Aさんは「真面目な夫を長年支え、子どもを育て上げた」という強い責任感と価値観を持って生きてこられた方です。病気で一時は「自分らしさ」を見失い、恥ずかしさから押し車の使用を拒んでいましたが、夫の介護が必要になったことで「自分が支えなければ」と再び役割を獲得したのです。その後は困った時に近くの看護師に相談しながら、夫と共に生き生きと地域活動に参加しています。
対象者がどんな人生を歩み、どんな価値観を持っているかを知ることは、支援において極めて重要です。その人らしさに働きかけることで、人は再び前を向く強さを発揮します。在宅看護の対象は、それぞれの人生を懸命に生きてきた「生活者」です。私たちは今ある姿だけでなく、その歩んできた「語り」に深く耳を傾け、望む暮らしを共に描いていく姿勢が求められているのだと思います。
医療学部 看護学科 助教 三村郁子