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 【生涯学習】

《公開講座記録》【人間学で読み解く現代社会】第5回 生の意味世界とその深み—宗教人間学の立場から—

第5回 ●2019年5月25日(土) 午後1:30
テーマ ●生の意味世界とその深み—宗教人間学の立場から—
          ●講師  澤井 義次 宗教学科教授

内容

今ここに生きていることの意味について、生の深みの次元から捉えなおすことは、私たちにとって、より良く生きる力になる。この講演では、宗教人間学の立場から、生の意味世界を探究することによって、生に込められた意味を掘り下げて理解したい。宗教人間学は、近代科学的な世界観の枠を超えて、宗教学をはじめ、社会学、心理学、哲学などの諸学問の領域と関わりながら、学際的な方法論を採る。

現代社会では、生きることの意味を見失っている人々が多い。そうした社会状況の中で、宗教人間学の視座は、現代社会に生きる私たちの人生、生き方について、生の深みから問い直すためのきっかけを与えてくれる。私たちの日常生活に根ざす「宗教的なもの」は、日常的な意味世界という公共空間で、無自覚的に蓄積されてきた。長年にわたって、無自覚的に継承されてきた「宗教的なもの」のあり方を、生の深みの次元から考察するとき、今ここに生きていることの意味をより深く明らかにすることができるだろう。

私たちは日頃、とかく近代科学的な世界観によって、人間の生のあり方を理性的あるいは合理的に考えるきらいがある。それは言うまでもなく、それとしての意義をもっているが、現代社会におけるこころの諸問題の解決には役立ちにくい。現代社会は「ポスト高度成長」社会と言われるように、少子化と高齢化が同時に進行している。さまざまな問題が山積している現代の少子高齢化社会の中で、サポートネットワークとしての日常的なつながりを構築していくことの重要性が、広く認識されるようになっている。

現代社会において、より良く生きるための手がかりを得るために、こころを三つの視座から捉えることにしたい。それらは (1)人間の理性からの視座、すなわち「近代科学の知」の地平、(2)人間の感性、たましい、スピリチュアリティからの視座、すなわち「臨床の知」の地平、さらに「人間を超えたものの視座」、すなわち宗教的コスモロジー(人間観・世界観)の地平である。このように、私たちのこころを重層的に捉えるとき、これまで見えなかった生の意味の深みが明らかになってくるだろう。生の意味論的な視座から、生きていることの意味の深みを理解すると、生の意味世界は、日常的な意味世界すなわち社会慣習的な固定性によって特徴づけられる表層的な生活世界と、非日常的(スピリチュアル、あるいは宗教的)な意味世界すなわち表層的な生活世界を超えた生活世界の深みという二重性から成っていることが分かる。結論を先取りすると、こころの表層部分は日常的な意味世界に対応しており、こころの深層は非日常的な意味世界に対応している。私たちのこころが表層から深層へ深化するにつれて、存在の深みが開けていく。

生の具体的な場を踏まえた自己の理解をめざす私たちにとって、宗教あるいは宗教的なものは、人間存在を理解するための一つの重要な鍵であると言えるだろう。キリスト教神学者で宗教学者でもあったルードルフ・オットー(ドイツのマールブルク大学教授)が強調するように、人間は合理的なものとの関わりとともに、非合理的なものとの関わりの中でも生きている。オットーは宗教をその根底から支えている宗教体験の次元に立ち戻って、宗教の本質、すなわち人間の本質を捉えようとした。また宗教学者のミルチャ・エリアーデ(アメリカのシカゴ大学教授)は、オットーのものの見方を踏まえて、人間は本来的に宗教的であると論じている。

現代社会では、家族関係をはじめ、人間関係が不安定になっている。こうした社会状況において、生の意味論的な視座から、今ここに生きていることを捉えなおすとき、私たち一人ひとりが「自分らしい生きる意味」を見いだし、人生の設計図をとらえなおすことが大切である。私たちが社会の中で、他者とのつながりの中に生きていることを自覚することも肝心である。したがって今日、より良く生きるためには、これまで「当たり前」と思っていたことが当たり前でないという生き方への転換、すなわち、私たちが本来的に「宗教的」であることを認識すること、さらには、自己と他者の「つながり」を自覚して、それを深めていくことが、現代を生きる私たち一人ひとりに求められていると言えるだろう。

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