
3月25日、おやさと研究所では、天理大学創立100周年企画「元の理」公開教学講座シリーズの総集編として、「『元の理』の学際的研究の可能性」というテーマの下、特別講座「教学と現代」を開催しました。これまで11回にわたり、各研究員がそれぞれの専門分野を踏まえ、さまざまな学問的角度から「元の理」の教えにスポットライトを当て、その救済の真理について究明してきました。この度、これらの成果を踏まえて、独自の「元の理」研究を開拓された佐藤孝則先生(大阪動植物海洋専門学校長・まほろば両生類研究所長・元おやさと研究所員)をお招きして開いたものです。
最初に、佐藤孝則先生より「『元の理』の生物学的意義と進化論的評価」と題した基調講演を頂きました。佐藤先生の講演は、①「元の理」の動物学的考察、②「元の理」の進化論的解釈、③「元の理」の進化論史的評価の3つの部分からなります。①と②では、佐藤先生は、「元初まりの話」に登場する、神名を授けられた水棲生物の生態的研究を踏まえ、なぜそのような「守護の理」が説かれているかについて詳しく説明しました。そして、③では、明治初期に広まった国内の「ダーウィン進化論」と「元初まりの話」との関連について、日本における進化論史の視点から論じ、教祖がモースよりも先に脊椎動物の進化について早く発表されたのは驚くべきことだと述べて締めくくりました。
次に、「『元の理』の学際的研究の可能性」という総合テーマで、堀内みどり主任の司会の下、 パネルディスカッションが行われました。パネリストとして、澤井治郎研究員が「こふきを拵えること―こふき話と『元の理』」という演題で、また中西光一研究員が「進化論と人種主義―『元の理』が示すもう一つの世界観」という演題で、それぞれ人文社会学と天理教の教理との関連を切り口にして発表しました。

澤井研究員は、佐藤浩司天理大学名誉教授の研究成果を踏まえ、「元の理」が人間的理解を絶した根本の理合いを表すとすれば、これを目指して人間的理解が可能な「こふき」を作る営みが行われてきたこと、そして現在もその営みは途上にあるのではないかと論じました。また中西研究員は、「元初まりの話」が説かれた頃、欧米列強では人種間の優劣を正当化する人種主義が浸透した時期でもあったことを指摘。その上で、科学思想史及び宗教思想史の双方において、「元初まりの話」が示す画期的な進化論的意義について示唆しました。
そして、佐藤孝則先生を交えてのディスカッションの後、参加者を交えて質疑応答が行われました。最後に、井上昭洋所長がこれまでの公開教学講座シリーズを踏まえつつ、総括コメントを行いました。
なお、おやさと研究所では、今回の「教学と現代」を含め、「『元の理』の学術的研究とその新しい展開を求めて」と題した1年間にわたる公開教学講座の成果を、「伝道参考シリーズ」の一環として、単行本にして近々刊行予定いたします。また4月からは毎月25日に、新たな公開教学講座シリーズ「布教伝道と伝道学」が始まります。場所は天理大学研究棟第1会議室です。事前申し込みは不要ですので、振るってご参加ください。
(おやさと研究所・金子昭)