
8月25日、おやさと研究所では、公開教学講座シリーズ「『元の理』の学術的研究とその新しい展開を求めて」の第5回目を開催しました。今回は、八木三郎元研究員が「『元の理』と福祉思想」という演題で講演いたしました。八木元研究員は現在、バリアフリー研究所長に就かれ、奈良県及び天理市の障害者福祉等各種委員会の委員長など要職を務めています。専門分野は社会福祉学・障害者福祉学です。
八木元研究員は、教祖が高弟たちの作った「こふき」話に対して、なぜ「それでよい」と仰らなかったのだろうかと問題提起。そして、講演内容は、その解答を福祉思想から読み解いていくというものでした。生きることを困難にするバリアには、事物・慣行・制度・観念のそれぞれにおいて社会的障壁があり、これらを除去していくことがまさに福祉思想です。そのことを、自らの体験や動画を通じて具体的に説明しました。
これらの社会的障壁として、今回とくに問題にしたのが観念(意識、思考)です。八木元研究員は、「和歌体こふき本」(明治14年本)の中に、仏法(仏教)見立てがあることに着目。この仏法を含めた旧来の伝統思想の中に、観念のバリアが見出されるのではないのだろうか。そこで、そうした問題点がある文献として、『古事記』の「国生み神話」、『養老律令』の「戸主の条」江戸時代の『三世相』における「転生化身」の説話などを取り上げました。
教祖は、このような伝統思想の中に因習的な要素があることを見抜いて、仏法見立てや方位見立てなどが混入している「こふき」話に対し、「それでよい」と仰らなかったと考えられます。教祖は、「めまつおまつ(雌松雄松)」にこだわらず、だれもが同じ「たまひい(魂)」であることを「おふでさき」の中でも強調され、逸話の中でも女性の不浄をきっぱりと否定されているからです。八木元研究員は、そのように結論づけて講演を締めくくりました。
講演の後、フロアとの間で活発な質疑応答や意見交換が行われました。
この公開教学講座シリーズは毎月25日に開催されます。事前申し込みは不要です。
次回、第6回目は、澤井真研究員による「『元の理』の見立て・象徴論」です。9月25日(木曜)13時より、天理大学研究棟3階の第1会議室にて開催されます。
(おやさと研究所・金子昭)