私は、『舟を編む』というドラマが好きで、心を落ち着けたいときには、何度も繰り返し観てしまいます。辞書編集という一見地味に見える世界を通して、「人とことばのつながり」や、「人の手でしか行えない大切な仕事の継承」、「仕事への誇り」、「人間関係の深まり」などが丁寧に描かれており、深く心に響きます。
先日、本学看護学科4年生が、奈良県内12か所の訪問看護ステーションにて、9日間の在宅看護学実習を行いました。学生たちは、地域で暮らす療養者やそのご家族と実際に関わることで、在宅看護の本質と奥深さに触れ、大きな学びを得ることができました。
実習では、療養者の身体状況や生活背景に合わせた清潔ケアの工夫、一人暮らしで不安の強い高齢者への「自分史」の作成支援、難病患者の意思表出を助ける文字盤づくり、そして看取りの場面に立ち会わせていただくなど、多様な体験がありました。学生たちはそれぞれの場面で真摯に向き合い、看護師としての在り方を模索しながら行動していました。
実習最終日には、「地域において望む暮らしを支える看護とは何か」をテーマに学内で振り返りを行いました。学生たちからは、「信頼と理解に基づいた寄り添い」「個別性を尊重したQOLの向上」「予測的な視点でのリスク管理」「家族への支援」「地域との連携」「尊厳を支える看取り」など、実体験をもとにした多くの言葉が生まれました。
この学びは、療養者様やご家族様の協力、そして日頃から信頼関係を築いておられる訪問看護師の皆さまの支えがあってこそ実現したものです。貴重な学びの機会をいただいたことに、深く感謝申し上げます。
地域・在宅看護は、まさにその人の人生に寄り添い、暮らしを支える看護の原点です。今回の経験が、学生一人ひとりの心に種をまき、未来の看護へと受け継がれていくことを願っています。
医療学部 看護学科 地域・在宅看護学領域 奥田眞紀子