おやさと研究所では10月25日(日曜)、2026年度公開教学講座シリーズ「布教伝道と伝道学」の第6回講座として、尾上貴行研究員が「伝道史の探究2―戦前・戦中の北米・ハワイ伝道」という演題で講演いたしました。尾上研究員には、『天理教北米伝道と日系移民 : 異文化適応とトランスナショナルな視点から見た歴史と展開』(伝道参考シリーズ38)という著作があります。また、尾上研究員自らも英国連絡所長を6年間務め、海外伝道の第一線の経験を有しています。
尾上研究員はまず、ハワイ及びアメリカ本土・カナダでの日系移民社会の形成について述べました。というのも、これらの地域での初期の伝道は、移民信者が主体だったからです。ハワイが最も早く、また規模も大きく、1920年の時点では全人口の42.7%を日本人が占めるほどでした。アメリカやカナダでは、主に西海岸を中心に日系社会が形成されました。
天理教の初期伝道は生活の場を基盤としたものでした。やがて定住した日系移民が家族を形成し、二世世代も増えてきたこともあり、宗教家査証により渡航する布教師が教会を設立するようになるなど、1920年代後半には組織的な伝道が行われるようになりました。伝道を伸展させたのは、中山正善二代真柱による1933年のハワイ・北米伝道でした。翌1934年にはロサンゼルスにアメリカ伝道庁が設置されました。
布教伝道の形態は日本と同様、戸別訪問やおさづけの取り次ぎが基本でした。一方、現地化が模索され、系統を超えた「アメリカ誠心会」が発足。また二世世代の育成も力を入れて、21歳以上の二世信者による「アメリカ・ヂュニア教会」も設立されました。1941年にはハワイでは21カ所、アメリカ本土では41カ所、カナダでは1カ所の教会ができていました。
状況が一変したのは1941年12月の日米開戦でした。アメリカ本土在住の日本人は敵性外国人と見なされ、その指導者層は逮捕、抑留されるに至り、天理教の教会長や布教師も例外ではありませんでした。またその他の多くの人々も収容所に入れられました(ハワイでは戒厳令に留まりました)。収容所内でも信仰活動は続けられ、月次祭が勤められたり、おさづけの取り次ぎが行われたりしていました。
1945年8月の戦争終結後、抑留は解除され、生活再建とともに信仰の復興が取り組まれることになりました。1954年にはハワイ伝道庁も設立され、アメリカ本土やカナダでは伝道圏が東部地域へと展開していきます。また教理の「復元」により神道的要素を脱して、トランスナショナル化した(国籍や民族を超えた)宗教運動へと変化して現在にいたっています。
尾上研究員は講演の最後に、いずれも2024年のアメリカ伝道庁創立90周年祭、ハワイ伝道庁70周年祭の短い動画(各4分程度)を紹介しました。これらの映像からは、戦前・戦中の伝道の成果が今日このような形で結実している姿を見ることができます。参考までにそのURLを記します(いずれも天理教道友社ビデオ)。
アメリカ伝道庁創立90周年祭(2024年7月18日執行)
ハワイ伝道庁創立70周年祭(2024年9月29日執行)
講演の後、海外教会の経済的基盤について、海外布教者の資格について、戦前に海外伝道で用いられた英文教理書について、また現状厳しい状況にある教会の事例についてなど、活発な質疑応答や意見交換が行われました。最後に井上昭洋所長より総括コメントがなされました。
次回の公開教学講座は、11月25日(水曜)13時より、「伝道史の探究3―『天理教伝道者に関する調査』を読む」と題して、岡田正彦研究員が講演いたします。場所は天理大学研究棟第1会議室です。事前申し込みは不要ですので、ふるってご参加ください。
「布教伝道と伝道学」(2026年度公開教学講座シリーズ)ご案内
https://www.tenri-u.ac.jp/news/65105/
*写真:アメリカ・ハワイ伝道庁関係の写真と「伝道参考シリーズ」展示

(おやさと研究所・金子昭)
※第10回2月 井上昭洋 所長
伝道学の展開3―帝国時代とポスト帝国時代の海外布教戦略
会場がふるさと会館大ホールへ変更になりました。
※第6回と第7回が変更になりました。
<変更後>
第6回10月 尾上貴行 研究員
伝道史の探究3―戦前・戦中の北米伝道
第7回11月 岡田正彦 研究員
伝道史の探究2―『天理教伝道者に関する調査』を読む