能登半島地震の被災地を応援するイベントを開催しました 2025.03.21 国際学部国際文化学科社会連携地域・企業との連携6つのCONNECT地域社会とつながる

3月2日(日)、天理市民会館にて「天理でつながる!能登半島、助け愛プロジェクト ドキュメンタリー映画『凪が灯るころ ~奥能登、珠洲の記憶~』上映会」を開催しました。来場者400人を超える盛況のイベントとなりました。

イベント主催は、関西に在住する珠洲(すず)市およびかつて珠洲郡に含まれていた能登町出身者でつくる「関西珠洲会」。同会の幹事で、珠洲市で幼少期を過ごした国際文化学科の中祢勝美教授が、復興が遅れている珠洲の現状や奥能登の文化を関西の人たちにも知って欲しいと、今回のイベントを企画しました。

上映したのは、令和5年5月に発生した震度6強の「令和5年奥能登地震」の被害から復興を目指していた最中の令和6年1月1日、「令和6年能登半島地震」が発生し、壊滅的な状況に陥った珠洲市の人々が立ち上がろうとしている様子を、有馬尚史監督が珠洲市内で撮影したドキュメンタリー作品。祭りを成功させることでコロナや度重なる地震からなんとか町を復興させたい、そんな人々の思いや葛藤を描いた貴重な記録映画です。奈良県では初めての上映となりました。

キリコ祭りの巨大キリコが港に集まった映画の一場面(2023年9月、石川県珠洲市三崎町)。有馬尚史監督提供。

映画上映に先立ち、天理大学雅楽部が「平調音取」と「越天楽」の演奏を披露しました。同部は佐藤浩司総監督(天理大学名誉教授)の引率のもと、2024年9月、珠洲市に赴き、老人介護施設など3か所で慰問公演を行ないました。甚大な被害をもたらした奥能登豪雨のわずか数日前のことでした。
雅楽部には珠洲市生まれの矢田美歩さん(臨床心理専攻4年)が所属しています。矢田さんの父、矢田嘉伸さん(手取川分教会会長)は、令和6年能登半島地震の僅か1週間後に天理教寶立(ほうりゅう)分教会の石橋雄一郎会長とともに「珠洲ひのきしんセンター」を立ち上げ、ボランティアの受け入れ拠点として被災者支援、復旧活動の先頭に立って働いておられます。このような縁があり、今回、友情出演というかたちで本学雅楽部がオープニングを飾りました。

第2部前半は、馬緤(まつなぎ)キリコ太鼓保存会の皆さんによる、能登の祭りに欠かせないキリコ太鼓の勇壮な演奏でスタート。日本海側(外浦)に面する馬緤町は、能登半島地震で山が崩れて道路が寸断されたため孤立地区となり、住民が互いに助け合いながら苦境を凌いできたところです。地震で太鼓も損傷しましたが、国内外から(公財)日本太鼓財団へ寄せられた寄付によって新調された太鼓をこの日は珠洲市から持参し、感謝の想いを込めて力一杯演奏しました。客席の皆さんからも「ヤッサー、ヤッサー」の掛け声と温かい手拍子が沸き起こり、会場が一体となりました。

トークイベントで語る石塚愛子さん(左)と有馬尚史監督。

続いて行われたトークイベントでは、馬緤キリコ太鼓のメンバーに加え、津波被害に遭った石塚愛子さん(和洋菓子店「メルヘン日進堂」代表取締役で、映画にも出演)、珠洲から大阪に二次避難された鵜島善博さん(珠洲市にある春日神社の元氏子総代)、有馬尚史監督が登壇しました。
聞き手は中祢教授が務め、「珠洲」「祭り」「復興」をテーマに、経験した地震の被害や発災直後の行動、遅れている復興の現状、祭りが能登の人にとってもつ意味などを、それぞれの立場から語りました。
震災から1年2か月が経ち、復興が遅れているにもかかわらず被災地から届く情報は減っています。それだけに、珠洲の「今」を語ってくれた登壇者の発言には説得力がありました。   

トークイベントでは、映画に出演された室谷美恵子さん(珠洲市蛸島町)から届いたお手紙も代読しました。当日、時間の制約から披露することができなかった後半部分を紹介します。

「あれから一年が経ち、無我夢中で生き抜き苦境を乗り越えていく筈だったのに、仮設住宅に入居し安定した生活をしているのに、人との触れ合いが薄くなり、小さい町なのにどこに誰が住んでいるかも判らず、解体が進むにつれ暮らしていた家が跡形も無くなり空き地ばかりになった町並みを見るにつけ、虚しく、この地に生きてきた証も消え去った思いです。
仮設住宅も永久的なものでなくいつか出ていかなければならず、家を再建するにも余力がなく、災害公営住宅にもかなり厳しい条件があるとか。この地に住む者の心が置き去りにされているように感じました。
そんな中、崩壊してしまった町なのに、祭りの日が近づくと『祭りせんにゃ、みんな駄目になる!』と奮い立つ若者に啞然としましたが、たくましく、頼もしくさえ思い、どんよりした空に光が射し、準備する若者の弾む声と揺るがない強い絆があり、祭りがあるから頑張る、頑張れる、と立ち向かい、誰もが不可能だと思ったのに可能とする力こそが心の復興の原点となりました。
祭り当日はどこからともなく人が集まり賑わい、暗い闇の町に明かりが灯り、太鼓や笛の音が響きわたり、掛け声や満面の笑みで町が活気づき、苦しみから解放され、楽しいひとときでした。
みんな、希望と勇気を貰い、諦めず前向きに捉え開拓していけそうです。行政機関、全国の皆様の知恵と力を借りながら真の復興をめざし努力していきます。」

今回のイベントは奈良テレビのニュースでも取り上げられました(右の二次元コードから)。矢田美歩さん(臨床心専攻4年)もインタビューを受けています。

前売りチケットの販売、ポスター・ちらしの配付には、本学社会連携センター室職員も協力し、当日は物品販売も行いました。

なお、チケット代の一部は、能登半島地震で被災されたかたへの義援金とさせていただきます。

有馬尚史監督(中央)NPO法人「チーム能登喰いしん坊」代表の森本敬一さん(左から二人目)と社会連携センター職員
主催者(関西珠洲会)、出演者・登壇者、本学社会連携センター職員と。 指は「能登半島ポーズ」。

本プロジェクトを実施するにあたり、以下の自治体・事業所・機関・団体から後援名義の使用許可をいただきました。末尾ながら関係各位のご理解とご支援に対し、心より御礼申し上げます。

天理市,天理大学,株式会社モンベル,関西石川県人会連合会,南都大安寺,近畿日本ツーリスト株式会社,珠洲市,大和路秀麗八十八面観音霊場会,大阪・神戸ドイツ連邦共和国総領事館(敬称略・順不同)

中祢勝美国際文化学科教授コメント

被災地に出かけて行う支援活動(瓦礫撤去や炊き出し等のボランティア、医療補助、物資搬送、著名人によるパフォーマンスetc.)が多いなか、能登につながる団体の一員として、逆方向の支援、すなわち、被災した珠洲の人たちに関西に来ていただき、自分の言葉で郷里の文化を語ってもらうことに意義があると考えて企画しました。これは、異なる文化に敬意を払い、多文化共生をめざす国際文化学科の理念と合致するものです。被災地の人たちが何を拠り所としているか、思いを馳せながら息長く彼らに寄り添っていきたいと考えています。
また、「珠洲市から祭りを奪ったら珠洲市じゃないような感じがした」という有馬監督の言葉から、厳しい状況に置かれているからこそ、「心の復興」には祭りの力が欠かせないと感じました。今回のプロジェクトにご賛同いいただいた皆さまに心より御礼申し上げます。

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