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 【宗教学科】

渡辺 優 講師の著書が出版されました。

このたび初の単著を上梓いたしました。2007年に博士課程に進学して以来取り組んできた研究の、現時点での集大成です。研究とは、一見孤独な作業にもみえますが、これまでに出会った多くの方々の支えがなければ、けっしてここまで来ることはできませんでした。この場をお借りして、お世話になった人びとに改めて感謝申し上げます。
私の本の中心には二つの問いがあります。ひとつは「神秘主義とは何か」。もうひとつは「信仰とは何か」という問いです。「神秘主義」とは、19世紀末の宗教学の黎明期以来、多くの学者たちを魅了してきた宗教学の根本概念のひとつです。本学科初代主任であった諸井慶徳先生もそうした学者たちの一人(偉大な一人)でした。神秘主義は、「宗教とは何か」という、これまた本質的な問いにショートカットで直結する特別な研究領域と考えられてきたのでした。
 
ところで、これまでの神秘主義理解は、概して「体験中心主義」的であったと言えます。宗教における個人の体験の重点化は、それまで信仰の真正性を支えていた制度や伝統の権威が失墜した近代以降の現象です。宗教離れが進んでいるとされる現代社会にあっても、「この私」が「いま・ここで」直接無媒介に神的存在に関わることを可能にするという体験の魅力(魔力?)は、むしろ増していると言えるかもしれません。神秘主義に惹かれた宗教学者たちのなかにも、信仰が弱体化する近代社会にあって、信仰にふたたび活力を与えてくれる神秘体験の力を強調した者が少なくありませんでした。
ところが、本書の主人公、17世紀フランスのイエズス会士スュランの神秘主義は、従来の体験主義的な神秘主義理解に根本的な再考を促します。ヨーロッパ史上最強クラス(!)の悪魔憑き体験から生還した彼は、自らの体験を『経験の学知』(1663年)という本に極めて詳細に綴っています。これまで彼の神秘主義について何よりまず注目を集めてきたのは、悪魔、そして神との直接的な交わりを可能にした、センセーショナルな体験の数々でした。しかし、65年にわたる彼の生涯の歩み、霊的道程をできるだけ丹念に追ってみるとき、彼の神秘主義の真髄は、そうした特権的な体験の一切を去った、「純粋」で「赤裸」な、そして「暗い」信仰の境地に見いだされるのです。かくして、スュランの神秘主義は、体験を中心に据えてきた従来の神秘主義理解に再考を迫る一方、神秘主義の信仰論という新しいテーマを提起します。それはまた、「信仰とは何か」という、「宗教学」にとってというより、「宗教」にとってより根本的な問いを、新たなかたちで考えさせるものでもあるでしょう。 
本書は、専門的な学術書でありながら、ある宗教者の信仰のドラマを描いた「物語」としても読めると思います。私自身、ある種の深い共感をもって彼が遺したテクストを読みました。17世紀フランスは、ヨーロッパが中世から近代へと移りゆく過渡期の時代でした。私たちの生きている現代が、近代と近代の「後」に来るであろう時代(ポスト近代)の狭間にあるとすれば、スュランの根源的信仰論は、現代の「信仰者」たちにも深い共鳴を呼び起こすのではないか。私はそう信じています。 

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