【実施日】第3回現地調査 2025年12月6日(土)
第4回現地調査 2025年12月20日(土)
今期の日本文化体験実習Ⅱでは、計4回の実地調査と1回の臨地見学をおこないました。実地調査では、京都を代表する民俗芸能であり、国指定の無形民俗文化財になっている嵯峨大念沸狂言を事例に、地域に根付き住民が伝承してきた民俗芸能を通じて、日本の各地域に根付いている伝統文化の体験を受講学生(留学生)にさせるとともに、卒業研究のなかで学生が各自で取り組むフィールドワークの練習として聞き取り調査の実施、学外で開催される文化交流サロンや講演会への参加を通じて、簡易な報告レポートの完成を目指しています。
第3回現地調査「第2回 民俗芸能交流サロン2025」への参加
現地調査の3回目は、京都芸術センター(京都市中京区)で開催された「第2回 民俗芸能交流サロン」に参加しました。この交流イベントは、文化庁の補助金事業の一環として京都の民俗芸能「活性化してやろう」会が主催したものでした。
民俗芸能の「未来」を語る。をテーマとし、本実習でお世話になっている嵯峨大念佛狂言保存会の加納敬二事務局長、京都中堂寺六齋会の秋田吉博会長、全日本郷土芸能協会の小岩秀太郎常務理事の3名によるクロストーク。このクロストークを挟む形で、中堂寺六斎念仏と、嵯峨大念沸狂言の実演がありました。


私たちが普段の生活の中で、中堂寺六斎念仏を見学しようとすると、8月16日に壬生寺でおこなわれる精霊送り奉納を中心に機会は限られています。嵯峨大念沸狂言にしても、4月の春公演、本実習でも伺った10月の秋公演、3月のお松明式の時だけです。このようなイベントでは、実演に際して主催者が用意する時間と場所の制約を受けるため、本来の公演とは異なる部分がありますが、本公演の時期以外に民俗芸能に触れる良い機会となり、興味をもった方々が本公演に足を運ぶきっかけになりますし、ここでしか見られないコラボレーションを通じて、技能交流などが試みられる機会になることもあります。今回の実演では、両団体とも土蜘蛛が登場し、蜘蛛の巣を放つ場面では、カメラを構えてベストショットを狙う人々、固唾を呑んで見入っていた観客が多かったように思います。

クロストークでは、3名の登壇者が、地域の民俗芸能が将来どうあるべきなのか。「継承」のあり方、現代社会の中で何を変えても良いのか、変えてはいけない本質とは何か。伝統と新作/創作についての考え方が議論されました。
第4回現地調査「京都学・歴彩館府民共働連続講座/第31回NPOさらんネット文化交流会」への参加
第4回現地調査では、京都学歴彩館(京都市左京区)で開催された市民向け講演会に参加しました。NPOさらんネットは、京都西郊の嵯峨・嵐山地域の地域活性化や魅力発信に取り組んでおられる団体です。本実習でお世話になっている嵯峨大念仏狂言保存会の加納敬二事務局長は、当NPOの副理事長を務められているほか、公益財団法人京都市埋蔵文化財研究所の元職員として、40年にわたり京都市内の埋蔵文化財の発掘調査・研究に従事されていました。今回の講演では、加納敬二氏が講師として演台にたち、「京都洛西・嵯峨野の遺蹟へのもう一つの視点〜秦氏の痕跡を探る〜」という題目で講演されました。


わたしの個人的な収穫といえば、当日のランチで数年ぶりに歴彩館近くのChang-Noi(チャンノイ)というタイ料理屋で、大好きなカオマンガイとトムヤムクンを堪能できたことです。京都でのオーバーツーリズムが問題になって久しいのですが、近年、京都植物園周辺も観光客が多く、馴染みの店が常に観光客で一杯で、なかなか食事を楽しむこともできません。ここは、タイから輸入される食材と地元野菜を使ったメニューが人気で、タイ人シェフによる地元タイの香りもしっかりしつつ、多少日本人向けにジャパナイズされているので、食べやすいのかもしれません。今後もずっとそこにあってほしい名店の一つだと私は思っています。しかし、それはまた別の話・・・。

さて、参加した学生たちは、何を聞いて、何を思ったのでしょうか。これは、日本での出来事なのだから、自分には関係ないことだ。と、もし思ったとすれば、それは残念なことです。
今回参加した交流サロンで議論された、地域に根付く民俗芸能をめぐる「継承」の問題、文化講演会で示された地域の再開発にともなう発掘調査やその遺構整備などの諸問題は、別に日本のみの事例では無いのです。2100年代には、世界人口の増加は止まり、その後は急速な少子高齢社会がやってくることは既に指摘されおり、継承されてきた地域文化をどうするのかという問題は、全世界で問題化する訳で、日本は世界に先立って、今岐路に立たされているだけなのですから。
日本学科(留学生対象) 講師 長谷川 奨悟