Lateral Thinking

世紀の主役は交代する!

 世紀末というのは、やはり様々な現象が起こるのだろうか。ここに紹介するのは静かに舞台から退場していくもの、新たな出を待っているもの達b。

その1。ヘレン・トーマス(79歳)のホワイトハウスからの引退。丁度40年前からUPI通信(当初はUP通信)のホワイトハウス詰め女性記者として活躍してきたがこの程、突然引退を発表した。ケネディ以来歴代の大統領を見つめてきたへレンからみれば、ホワイトハウスで出入りが忙しかったのは、記者ではなく大統領の方だろう。ニクソン、フォード、カーター、レーガン・・・クリントンとお相手が次々変わった。米国でもヘレンが登場した頃は新聞記者はまだまだ男性社会だった。

それが、いつのまにか、大統領会見といえば、まず質問の口火を切るのはへレンというのが常識になった。そして終わるのはやはりヘレンの「サンキュー・ミスター・プレジデント」の一言。大統領が旅行するときもそばにはいつもヘレンがいた。

なぜ、いま引退?実は辞表を提出する前日、経営の苦しくなっていたUPIは突然、統一教会が運営にあたっているニューズ・ワールド・コミュニケーションズ社に身売りする発表を行っていた。彼女自身は「身売り」について一切コメントしていないが、引き時と考えたのだろうか。

その2。ベティ・フリーダンの回想録出版。フリーダンの名前ぬきに20世紀後半の米国の女性解放運動を語ることができないだろう。彼女もヘレンと同じ79歳。フェミニズムのバイブルといわれるThe Feminine Mystique を出版したのが1963年、以来世界中で300万部以上の売り上げを出している。

そのフリーダンがこの5月、ニューヨークの Simon & Schuster 社から Life So Far なる回想録を出版して話題になっている。書評によると、この本は世界の女性の生き方を変えたともいわれるフリーダンが労働運動を取材する記者からはじめ、前記の著書を出版、女性解放運動を具体化するためNOW(全米女性組織)を結成、さらに運動を広げていった実態と苦労話を披瀝している。しかし最近のニューヨーク・タイムズ紙とのインタービューでは、自分がフェミニストと呼ばれるのを嫌っており、過激な女性運動とは一線を画して、家庭を大事にすることを強調している。その点、同回想禄では、一番苦しかったのは、子供を抱えながら離婚せざるをえなかったことだと告白しているという。

その3。これは人間ではないが、21世紀の社会に大きな影響を与えるだろうと評価されている『自然資本主義』と題する本の出版である。

米ロッキーマウンテン研究所のAmory & L. Hunter Lovins 夫妻と経営評論家のPaul Hawken 氏が昨年、Little, Brown and Company 社から出した Natural CapitalismbCreating the Next Industrial Revolution と題する刊行物で、ますます多くの人々に読まれているという。

これまでの資本主義の概念ではひと、かね、ものを基本的な資本とし自然を搾取してきたが、その結果自然の生態系が崩れ地球そのものが危機的状況に追い込まれている。この著者の考え方では自然の生態系を改善しながら、人間の豊かさを見出していこうという地球の環境保全と経済発展を両立させていこうという「第二次産業革命」を目指しているというので注目を浴びている。第二の『国富論』と呼ぶ人もいるが、人類の将来について悲観論が横行している中で新しい光を投げかけることができるだろうか。          

(YK)