Letters from Seattle

米法廷に「真実派」登場

 「アメリカの裁判はゲーム」といわれる。検察側も弁護側も、真実の追究より勝つことを目指し、その勝負に判定をくだすのが裁判官とだという。さらに、現在のアメリカの刑事裁判にあたる判事も二種類に分けられるといわれる。

 被疑者の投獄を目的とし、そのためにはかれらのcivil liberties もお構えなしという「検察派」。対するのは、逮捕時にミランダカードを警察がちゃんと読むなどの手続を一つでも怠ったり間違えたら、疑問の余地のない被疑者でも無罪にすべきだとする「弁護派」である。

 シンプソン裁判のL. A. イトー判事はこの従来の型とは違い、あくまで真実を追究する第三の「真実派」の傾向があると、The New Yorker の Jeffrey Toobin 氏は書いている(March 27, 1995)。

 真実派は「警察による不法な証拠収集だとしても証拠をすべて陪審員に公開して真実を追い求める一方、民事訴訟によって被害者に警察の不法行為にたいする損害賠償を求めさせる。または、組織的にその警察官の処罰を決定する」と主張する。その例としては、Rodney King がロサンゼルス市警を相手取り、多額の賠償金を手にしたものがあげられる。

 証拠収集の背景がどうであろうと、犯罪に関する有効な、すべての事柄を陪審員に公開されるべきであるとなると、司法の正当な捜査を義務付けた憲法修正第4条に抵触しかねない。真実派はその点、被疑者が警察へ賠償を求める過程をシステム化することによって、警察の行動を規制できるという。

 陪審制の是非を含めて裁判の在り方が問われているいま、はたしてイトー判事が最後まで「真実派」で通せるか、注目される。

 

60年代のスター今いずこ

 

 1960年代、アメリカに吹き荒れた社会変革の嵐のなかで活躍したスーパースターたちはいまどこで、なにをしているか。シアトル・タイムズ紙(95年8月20日付)が追跡記事を掲載しているので、その一部を紹介してみよう。

 

*Bobby Seale(59=元ブラックパンサー党議長)自伝「A Lonely Rage 」を書き上げた後、年に四、五十回各地でアフリカン・アメリカン研究の講演会を行っているが、昔の同志とはほとんど交流がないという。

*Tom Hayden(55=68年の民主党大会で暴れて裁判にかけられたシカゴセブンの一人)20年雌伏した後、82年カリフォルニア州下院議員、10年後州上院議員に。環境問題の専門家で、最近は死刑復活論に賛成。

*Abbie Hoffman(同じシカゴセブンの一人)麻薬の売買で逃げ回り、89年52歳で死去、明らかに自殺という。仲間のJerry Rubin も職を転々とし怪しげな健康食品など売り歩いて、91年交通事故に遭い、重傷を負う。

*Eldridge Cleaver(ブラックパンサー党の指導者、Soul on Ice の著者として有名)リサイクル屋やファッションデザイナーをやるもうまくいかず。共和党に転向、80年代にはレーガン大統領を支援。

*Jane Fonda(ベトナム反戦運動で有名になった女優)一時はHaydonと結婚していたが別れ、現在はCNN創設などマスコミ界の大御所 Ted Turner氏の夫人。

*Angela Davis(51=黒人女性運動の活動家)サンフランシスコ州立大学教授となっているが、最近権威ある新聞で「アフロスタイルの髪型を流行させた人物」として紹介されたことに憤慨して、反論を書いている。         

(田北眞樹子)