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 【生涯学習】

《公開講座記録》【地域研究への招待】ニューヨーク市のコリアンタウンと移民社会

第3回 ●平成29年6月17日(土) 午後1:30
テーマ ●ニューヨーク市のコリアンタウンと移民社会
          ●講師  魯ゼウォン 地域文化学科教授

内容

 本報告の目的は、ニューヨーク市のコリアンタウンを取り上げ、韓国系米国人の移民社会の現状とその意味を現地調査の資料をもとに、日本社会との比較の視点から検討することである。

  ここでの韓国系米国人とは、1965年の移民法改正以降、移民として米国へやってきた韓国出身の移民者とその子孫たちを指す。韓国系米国人の多くは、家族経営の独立系の自営業を営みながら、大都市を中心にコリアンタウンを形成した。韓国系米国人の定着が進むにつれて、安定的な定住層や移民1.5世や2世が台頭してきた。こうした韓国系米国人は、コリアンタウンを中心に多種多様な民族組織を形成し、民族コミュニティのなかで生活してきた。しかし、1992年のロスアンゼルス暴動の際に、白人警官と黒人との葛藤が原因で黒人がコリアンタウンを攻撃するという経験を通じて、米国社会の人種間の葛藤という構造的な問題に韓国系米国人も関わっていることを自覚し始めた。この認識をもとに、ニューヨーク市の韓国系米国人は、他の移民集団との共存関係をもとめて、移住先の社会への参加を模索した。そこで注目されるのが、ニューヨーク市のコミュニティ委員会という市政参加制度である。コミュニティ委員会は土地用途変更や都市計画等の審議機能をもっており、ローカル社会の地域自治を行う場である。そこで、筆者はコリアンタウンにおけるコミュニティ委員会を取り上げ、①新着移民者地区(Flushing)、②安定した移民者地域(Bayside)の2つの地区における韓国系委員の活動に注目し、数次にわたる現地調査を実施した。その結果は以下のとおりである。

第1の新着移民者地区では、1名の移民1世女性、2名の移民1.5世男性が韓国系委員として活動している。女性委員(60歳代)は韓人会長の経験をもつ韓国系移民団体の役員である。男性委員(20歳代~30歳代)の職業は弁護士と有権者運動家で、高学歴でかつ専門職に就いている。この地区は移民者が急増しているが、委員会の中心メンバーは白人住民であり、移民者役員は消極的に関わっている。韓国系委員は委員会と韓国系移民団体とのネットワークの役割をもっているのである。

第2の安定移民者地区では、移民1世女性(70歳代)と韓国系移民団体所属の移民1.5世の女性(30歳代)が活動している。韓国系委員は土地計画の情報をいち早く知ることができることを委員会のメリットとして挙げている。安定移民者地区においても、韓国系委員は何かを提案するというより、会議に参加する程度の活動に止まっている。

要するに、ニューヨーク市の韓国系米国人は、コミュニティ委員会という市政参加制度の周辺的な担い手であると捉えられる。韓国系委員はローカルな社会と韓国系移民社会との媒介の役割を担っているが、今後委員を経て地域政治へ進出しようという新しい動きに注目すべきである。この事例は、アジア系移民者が社会参加の経験を積んで、その後に政治へ参加しようとする移民統合の一例を現わしている。こうした移民都市の事例は、日本社会にどのような意味をもつのか。1990年代以降、日本の地方自治体は多文化共生政策を掲げて、「外国人諮問会議」という一種の参加制度を創設している。また、在日外国人の定住が進むにつれて、生活者の立場から地域組織である町内会や自治会に参加しようとする外国人も増えている。ニューヨーク市のコミュニティ委員会は行政予算と土地利用に関する権限をもっている点で、移民者は移住先の社会に溶け込むルートと捉えている。いいかえれば、移民都市ニューヨーク市の事例は、地方自治体の都市内分権の進展は、生活者としての外国人居住者の社会参加を促進するということを示唆している。今後、人口減少時代を向かえた日本社会が外国人居住者をどのように受け入れるのか、とりわけ地方自治体における自治の力量が問われるといえよう。


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