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 【生涯学習】

《公開講座記録》【ことばと文学】「~のだ」の表現について

第1回 ●平成28年9月17日(土) 午後1:30
テーマ ●「~のだ」の表現について
          ●講師  吉田 茂晃 国文学国語学科教授

内容

文末に用いられた「~のだ」が表わす内容は多岐にわたる。「の」は叙述内容を体言形式にまとめあげる準体助詞であり、「だ」はそれを再び述語形式にする(再述語化)断定の助動詞であるという根幹はかわらないのだが、叙述の体言化と再述語化という構文的手続きに担わせることのできる表現意図は多様なのである。

まず、〈換言|顔が引きつっているのは、緊張しているのだ。〉は、名詞述語文における主語と述語がともに文相当となったものであり、二つの事態が究極的には一致するということを表わしている。ここでは、「の」は文相当の叙述を主語・述語たらしめるために体言化するという役割を果たしていると見なしうる。

〈得心|なるほど、座面の下が収納になってるんだ。〉と〈再認識|そうだ、紅茶をきらしてるんだ。〉は、遭遇した事態を言語化し、自らの知識という脳内のデータベースに登録する表現である。「の」によって体言化することは、ここではデータベースに登録するためのフォーマットの役割を果たしていると言えよう。これらとは逆に、自らの知識のデータベースから知識項目を選び出して相手に示すのが〈告白|実はみんなに黙っていたことがあるんだ。〉、〈教示|この店は地元ではとっても有名なんです。〉、〈強調|信じてくれ、オレは犯人じゃないんだ。〉のような用法である。〈得心〉〈再認識〉がインプットだとするなら、〈告白〉〈教示〉〈強調〉はアウトプットに当たる。

同じアウトプットでも、知識項目の提示ではなく希求項目を提示するのが〈決意|オレはぜったいあいつに一泡吹かせてやるんだ。〉と〈命令|バカだな、落ち着くんだ。〉という用法である。「の」で括ることによって単なる描写ではない希求の内容を指定することができるわけである。

以上に掲げてきた用法とは別に、「~のだ」の文が前後の文とのあいだに生じさせる表現効果もある。たとえば「加藤は車の窓を開けた。嫌な臭いがした。」という文章では、窓を開けるという事態と、その結果として生じた嫌な臭いがしたという事態との二つが表わされているが、「加藤は車の窓を開けた。嫌な臭いがしたのだ。」という文章では、窓を開けるという事態をその原因の面から見たのが嫌な臭いがしたという事態であって、結局は二つの文が一つの事態の二つの局面を示すことになっている。「~のだ」のこのような表現効果を〈捉え直し〉と呼ぶことにする。具体的な事象の背景を〈得心・再認識〉したり〈告白・教示・強調〉したりする表現である。

〈根拠づけ〉は、「~のだ」の文が、前後の文の背後の事情を述べてこれを正当化する用法である。「気をつけろ(命令)。ガスが漏れてるかもしれないんだ」「ちょっと休ませてくれ(依頼)。息切れがするんだ。」「嘘をつくな(禁止)。証拠は挙がってるんだ。」「コーヒー飲んでいこう(勧誘)。評判の店なんだ。」「何て書いてあるんですか(質問)。字が小さくて見えないんです。」など、相手に何かしら要求する場合の言い訳的な補足説明や、「これだけ待ってるんだ。もう帰ってくるだろう(推量)。」「この難局を乗り切ったんだ。あいつももう一人前だよ(評価)。」「やることはやったんだ。後悔はしてない(感想)。」といった、個人的な判定に対する補足説明として、その事情を〈告白・教示・強調〉する表現である。

そのほか、「なんだ、赤ん坊じゃないや(打消)。猫が鳴いてるんだ。」「早まるな(禁止)。落ち着くんだ。」のように、否定的事態に対する〈別案提示〉として機能する「~のだ」の文もある。

【講演では、「~のだった」や「~のか」の文の用法についても触れたが、紙幅の都合で省略する】

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