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 【生涯学習】

《公開講座記録》【外国語への招待】英語の語彙力増強のための学習法・指導法

第3回 ● 平成26年10月11日(土) 午後1:00
テーマ ● 英語の語彙力増強のための学習法・指導法
講 師 ●  小林 千穂 外国語学科准教授

内容

  外国語教育の歴史は中世にまで遡るが、語彙指導の歴史は浅い。これまでの外国語教育において重視されてきたのは、文法、読解、コミュニケーションなどで、1980年代後半になって初めて、語彙に関心が向けられるようになった。しかし、言うまでもなく、コミュニケーションには語彙の知識が不可欠である。Wilkins(1972)が述べるように、文法を知らなくてもある程度コミュニケーションは成り立つが、単語を知らなければコミュニケーションは全く成り立たない。
 
 語彙知識は単語の意味を知っているということ以上のことを意味する。Nation(2001)は、語彙知識を「語形」、「意味」、「使用」と大きく3つに分け、さらに、「語形」を「音声」、「綴り」、「語の構成要素」の3つの下位区分に、「意味」を「語形と意味」、「概念と指示物」、「連想」の3つの下位区分に、「使用」を「文法的機能」、「コロケーション」、「使用時の制約」の3つの下位区分に分けている。さらに、この9つの領域をそれぞれ受容語彙、発表語彙に分けている。同様に、Daller, Milton, Treffers-Daller(2007)は、語彙知識を「広さ」、「深さ」、「流暢さ」に分類している。「広さ」は語彙知識の量、「深さ」は語彙知識の質、「流暢さ」は語彙処理の速さを指す。母語話者であっても、すべての語を同じように知っているとは限らない。意味と綴りを受容的に知っているだけの語もあれば、ほとんどの領域の知識を持っている語もある。語彙習得は、その単語と何回も出会うことによって、少しずつ知識が積み重なっていく過程である。ある時点で、一部の知識しかなかった単語に、別の部分の知識が加わって、その語の知識が充実していく。母語話者であっても、学習者の場合と同じように語彙の知識は一生を通じて変化していく。
 
 では、学習者はどれくらいの語彙知識を習得することを目指すべきなのか。英語母語話者は17,000ワード・ファミリー(見出し語とその派生語を1語として数える方法)程度の語彙知識があるが(望月・相澤・投野, 2003)、それらを常にすべて使用しているわけではなく、一部の高頻度語で話し言葉、書き言葉の大半をまかなっている。したがって、こうした高頻度語を習得することが学習者にとって重要である。英語学習者の1つの到達目標は、使用頻度の高い、5,000語または3,000ワード・ファミリーを習得することだと考えられる(望月・相澤・投野, 2003)。これだけの語彙があれば、英文や会話の大部分の単語が理解できるようになるからである。
 
 語彙の学習方法は意図的学習と偶発的学習に分けられる。意図的学習は、単語帳を活用して単語を覚えるなどの語彙の学習自体を直接の目的として行う方法である。偶発的学習は、英文を読みながら語彙を習得するなどの英語使用を目的としながら副産物として語彙を学習する方法である。意図的学習が語彙の広さを高めるのに役立つのに対して、偶発的学習は語彙の深さ・流暢さを高めるのに有効である。第1言語の語彙は主に偶発的学習によって習得されるが、第2言語の語彙は両者を併用して習得される。特に、使用頻度の高い3000ワード・ファミリーは、早い段階で意図的に習得することが重要である。
 
 効果的な学習法・指導法については、「語彙リストは役に立たない」、「文脈から語義を推測するのは効果的である」、「1つか2つの有効な学習ストラテジーがある」「電子辞書は役に立たない」などの様々な俗説がある。しかし、実証的データはこうした俗説が間違っていることを示している。また、語彙習得の理論から見ても、こうした俗説が間違っていることが明らかである。語彙習得は、少しずつ知識が積み重なっていく長いプロセスである。そもそも、どんな方法を使ったとしても、一回学習しただけで、何の知識のないところから、十分な産出ができるようになるまでにはならない。さまざまな文脈で単語に触れることで、徐々にその語の知識が充実していくと考えられる。1つの学習法だけに依存せずに、様々なテクニックを用いることが重要である。リストを作って覚えるなどの語彙の広さを高めるような学習法を、文脈で学習するなどの語彙の深さ・流暢さを高めるような他のテクニックと併用して使うと効果的である。
 
 誰にでも効果のある唯一の語彙の学習法は存在しない。学習者は、自分に合った学習法を見つけ、それに継続的に取り組む必要がある。また、1つの学習法だけに依存するのではなく、さまざまな学習法をバランスよく使用する必要がある。教師は、学習者にできるだけ多様な学習法を指導し、語彙学習には多様な選択肢があることを学習者に意識させるべきである。
 
参考文献
Daller, H., Milton, J., & Treffers-Daller, J. (2007). Editors’ introduction: Conventions,
terminology and an overview of the book. In H. Daller, J. Milton, & Treffers-Daller (Eds.), Modeling and assessing vocabulary knowledge (pp. 1-32). New York: Cambridge University Press. 
望月正道・相澤一美・投野由紀夫。(2003)。『英語語彙の指導マニュアル』。大修館書店。
Nation, P. (2001). Learning vocabulary in another language. New York: Cambridge
  University Press. 
Wilkins, D. (1972). Linguistics in language teaching. London: Arnold. 
 

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