Americas on the Move

アメリカスが動いた!

FTAAは2006年にスタートを決定

 

とうとうアメリカスが、マクベスがおそれた「バーナムの森」のように、国際舞台で動き出した。この4月末の英字紙誌を見ていたら、連日、Americasの活字が踊っていた。だが残念ながら、日本の新聞や雑誌からこの文字を見つけることはできなかった。

そのニューズは、4月20-22日の三日間、南北アメリカとカリブ海地域の34カ国の首脳がカナダのケベックに集まって行われた「Summit of the Americas, 2001」である。正確にいうと、1994年にマイアミ(米)、98年にサンチャゴ(チリ)で準備の会議を行っているので第3回アメリカス首脳会議である。日本の新聞には「第3回米州首脳会議」と訳されていた。会議は閉会時に「ケベック宣言」を発表、2005年1月までにアメリカス地域の自由貿易圏(Free Trade Area of the Americas=FTAA)を創設、2006年当初から発足する事が決まった。

自由民主主義体制が加盟の条件になっており、一党独裁のキューバは含まれていないが、この貿易圏が出来上がると総人口は8億人、国内総生産(GDP)は11兆7千億ドル、世界最大の自由貿易圏となる。

もちろんこの協定を実現するには、越えなければならない多くの壁がある。EU(欧州連合)と違って、米国の国力が突出しており、多くの国は米国の支配下にはいるような経済圏になることを警戒している。国際競争力をつけることを急ぐあまり、アメリカス地域の環境が破壊されたり、一部地域に労働不安が起こってはならない。肝心の米国議会がこの経済圏協定締結への話し合いを大統領が一括して行う権限(ファースト・トラック法)を認めていないので、ブッシュ大統領は本年中にその法案を可決させるのが緊急の問題だ。ブッシュ大統領にとり、アメリカス首脳会議への出席は国際会議への最初の参加であり、FTAAは父親の前々大統領の発案であるので、思惑通りに実現するか彼の政治力が問われるところである。そのためブッシュ大統領は「対アメリカス政策を最優先する」と言明していた。

会期中、FTAAに反対する環境主義者などが数万人ケベックに集まった。主催国カナダもかれらへの配慮と治安維持のため、対話の場を設けるなどして混乱を最低限に抑えるのに成功した。経済協力が軌道にのれば、つぎは社会的、政治的協力の要請が必然的に出てこよう。ローカリズム(一国主義)とグローバリズム(地球主義)の中間となるリージョナリズム(地域主義)への一里塚がアメリカスに生まれようとしている。

それにしても、日本語では米州とは(American States)の略であり、アメリカスをも米州と訳すと混乱が起こるので、アメリカスを新しい表記とする時が来ているのではないだろうか。                          

 (北詰洋一)