Lateral Thinking

 

新世紀初頭のアメリカス二題

 

 10年に一度、米国では大規模な国勢調査が行われる。昨年がその年でその分析が目下すすめられており、そして結果が少しずつ明らかにされてきた。まず総人口は1990年より13%あまり増えて2億8,142万1,906人(2000年4月1日現在)。

 今回の人口動態の一番の特徴は、第二次大戦後一貫していた北部の産業地帯から南部および西部のサンベルト地帯への移動が続いていることだが、中でも人口増加が著しいのはネバダ、アリゾナ、コロラド、ユタ、アイダホなどこれまであまり注目されていなかった諸州への移動である。これとは反対に、伸び率が10年間でぐんと減ってしまっているのはニューヨーク州。

 これまで移民の急増で伸び率が突出していたカリフォルニア、フロリダの2州の人口増加は一段落したようだが、依然として増え続けている。

 ミシガン大学の人口学者、ウィリアム・フレイ教授によると、今回の国勢調査での最大の「勝利者」は、ブッシュ新大統領の出身地テキサス州だという。その理由は、南部のIT産業の中心地にあることと、ラテンアメリカからの移民(ヒスパニック)数がきわめて多いことである。テキサス州はいまやニューヨーク州に代わって、米国で第二の人口密集州となったようだ。

 これから次々国勢調査の詳細な結果が明らかにされてくるが、人種別の人口動態が分かってくるにつけ「アメリカス」としての米国の色模様が姿を見せてくるだろう。

(この問題に関心のある人は US Census Bureauのホームページ=http://www.census.gov/をおすすめします)

 ラテンアメリカ諸国は20世紀を通じて、絶えずどの経済圏、あるいは通貨圏に入るべきかに頭を悩ましてきた。米国の経済的支配下に入ることには国民感情がなかなか許さないが、ヨーロッパがEUのもとで結束し、共通通貨ユーロを実現した状態ではラテンアメリカ諸国も安閑としていられない。

 目下中米が中心だが具体的に動き出した。まずエクアドルが昨年ドル貨圏に入った。続いてこの元旦にエルサルバドルがドル貨の採用を決め漸進的にドル貨圏に入ることを決めた。グアテマラは昨年12月19日、議会でクェツァルとともに米ドルを併用していくことを決めた。コスタリカにも同じような動きがでてきている。

 当事国のドル貨圏への移行の理由はそれぞれ異なるが、米国への経済的依存度が高い小国には背に腹は代えられない事情があるのだろう。

 しかし同じラテンアメリカ諸国でも、大国の思惑は今ひとつはっきりしない。長い間不況に苦しんでいるアルゼンチンは別として、NAFTA(北米自由貿易地域)に入っているメキシコも含めてブラジル、チリ、コロンビアの動きは今ひとつはっきり見えてこない。yanqui dollar (米ドルのラテンアメリカでの愛称)と運命共同体になるかどうか、きびしい選択に迫られていることは事実だろう。

 ブッシュ米新政権がラテンアメリカ担当の外交責任者の指名を後回しにしていることにはこだわりをみせており、4月にケベックで開かれる第三回アメリカス首脳会議での出方に各国とも注目している。

(北詰)