Letter from New Mexico

NM大学ははメキシコの大学?

 

 ニューメキシコ州立大学は米国ニューメキシコ州ラスクルセス市にあり、学生数は1万5000人です。同市は7万人の住民のおよそ半分は大学関係者という典型的な大学都市です。車で1時間ほど南下すれば、そこはもうメキシコとの国境ということで、ヒスパニック系住民が多く、英語とスペインのバイリンガルのひとがたくさんいます。天理大学を卒業してすぐ、日本語、英語、スペイン語のトゥリリンガル教師をめざして単独で渡米した私にとって理想的な環境といえます。

 大学院のスペイン語研究科の学生はおよそ20人で、米国人2人と日本人の私をのぞいてすべてスペイン語圏(メキシコ、コロンビア、コスタリカ等)からの留学生です。同研究科は文学専攻と言語学専攻に分かれており、私はおもに言語学とスペイン語教授法を学びました。教授法の授業は国内のヒスパニック系住民等にどうのようにスペイン語を教えるかという実践的かつ現実にそくした内容でした。レポートはすべてスペイン語で書くことが要求されましたが、クラスメートのほとんどスペイン語のネイティブなのでずいぶん助けてもらい、なんとか授業をこなしていきました。

 修士課程は2年間で、最後に卒業試験を受験してそれに合格しなければなりません。卒業試験は、筆記試験と口頭試験があり、まず6問の論述式問題に6時間ぶっとおしで格闘しなければなりません。学科の全教員がその答案に目をとおし、全員の了解が得られればつぎの口頭試験にチャレンジできます。試験は受講した科目の内容と20冊以上ある文献リストのなかから出題されます。2年間いっしょに勉強したルームメートのスペイン人の女の子にいろいろ教えてもらい、私はなんとか合格することができました。そして、口頭試験はスペイン語でおこなわれ、大学院で学んだことをどのように活かしていくつもりかなどといったことを2時間にわたってきかれました。私が無事に卒業試験をクリアできたのは本当にクラスメートのおかげです。

 大学院生の多くはティーチング・アシスタント(TA)やリサーチ・アシスタント(RA)として学内で働きながら勉強しています。スペイン語研究科の学生は私をふくめみんなTAとして、学部の1・2年生の学生にスペイン語を教えています。TAになると、優遇措置として授業料が州内出身者と同額(1200ドル/学期)になるうえ、月額1000ドルが支給されるので、ぜいたくをしなければそれで授業料と生活費をまかなうことができます。

 私はおもに1年生のクラスを担当していました。25〜30人のクラスで年齢は18歳〜65歳までと幅広い層がいっしょに勉強していました。授業は50分で、週に4コマあります。1学期の授業回数75回のうち15回以上休むと自動的に不可となります。授業はすべてスペイン語でおこなうダイレクト・メソッドです。学生たちはみな熱心で、授業に積極的に参加してくれて、不慣れな私もなんとかこなすことができました。最後の授業では、学生たちが得意料理をもちよってちょっとしたパーティをして盛り上がりました。

 このように、米国の大学院はアシスタントシップが充実しているので留学生でも経済的にもなんとかやっていけます。読者のみなさんも、ニューメキシコ州立大学で勉強してみませんか。願書は、インターネットのHPで簡単に入手できます(http://www.nmsu.edu)。大学院生は大学卒業後に社会で何年か経験を積んでから入学するひとも多く、年齢も国籍も多様です。現在、私はテキサス州エルパソ市の中学・高校でヒスパニック系の生徒に日本語を教えており、とりあえずトゥリリンガル教師になるという夢は実現したが、まだまだ力不足で勝負はこれからです。

(二村友佳子)