Lateral Thinking

真のメルティングポット誕生へ

 21世紀のアメリカ人の表情はどうなるか。きわめて興味あるところだが、米USA TODAY紙は9月8日付の一面カバーストーリーで「アメリカの新しい顔ー多人種の混血が真のメルティングポットを生む」と題する特集記事を掲載しているので紹介してみよう。

 アメリカで10年に一度行われる本格的な国勢調査は明2000年4月に実施されるが、同紙はそれに先立ち、国勢調査局(CB)の資料および専門家の見解を集めて思い切った推測を行っている。それによると、2025年にはアメリカでの白人の人口比率が急速に減り、逆にヒスパニック系が最大の少数派となる。それ以上に注目されるのは、多人種、多民族(白人、黒人、ヒスパニック系、アジア系)の混血の人々が2050年には現在の3倍増となり、人口比では21%に達するという。アメリカでは理論的には可能でも実現は不可能といわれた「メルティングポット」が実現して、多人種多民族の血が混じりあった真の「アメリカ人」が誕生するというわけだ。

 以下、同紙が伝えるアメリカの人口などの変化の主なものを列挙してみよう。

 ▽1999年現在の人口構成は白人72%、黒人12.1%、ヒスパニック系11.5%、アジア系3.7%、アメリカン・インディアン0.7%だが、2025年には白人62.5%、黒人13%、ヒスパニック系17.6%、アジア系6.2%、アメリカン・インディアン0.8%となる。

 ▽2025年のアメリカの総人口は1999年より23%増の3億3,500万人となる。その間に白人の人口増は6%にとどまる。

 ▽2005年、最大の少数派はヒスパニック系となる。さらに2025年にはその数はほぼ6,000万に達する。

 ▽黒人の人口は今後25年間で31%増となり、人口比は現在の12%から13%とほぼ横這いである。

 ▽人口の伸びが一番大きいくなるとみられるのはアジア、太平洋諸島系の人々で倍増して2,100万人前後になる(人口比約6%)とみられる。

▽ネイティブ・アメリカン(アメリカン・インディアン、エスキモー人、アリューシャン人)の伸びはもっとも低く、25年後にも0.8%にとどまるだろう。

 ▽2025年に大きく様変わりするのは国民の年齢構成である。14歳以下の若年層が21%増と最大の伸びを見せ、次いで80歳以上の老齢者14%増となり、逆に35歳から49歳の中年の比率が4%減って、アンバランスな年齢構成になる。

 ▽国内での人口の移動も大幅に行われる。北東部と中西部から南部と西部への移動である。1995年には人口の57%が南部と西部に住んでいたが、2025年には総人口の62%がこの地域に住むことになろう。

 ▽これを州別でみると、ニューヨーク、ペンシルベニア、オハイオ、ミシガン、アイオワの諸州では25年間に10%前後しか増えないのに対し、アリゾナ、ニューメキシコ、ユタ、ネバタ、テキサス、アイダホ、フロリダの諸州では45%以上増加するとみられる。もっとも伸びが大きいとみられるのはカリフォルニア州の56%増で、その人口が4,920万人になるとみられる。ウエストバージニア州はわずかに1%しか人口の伸びは期待できない。そしてフロリダ州はニューヨーク州をぬいて人口で第3位に浮上、ニューヨーク州は第4位に。

 こうなれば、アメリカの人口地図ばかりか、政治経済地図も当然変容し、従来のアメリカについて考えていた常識は完全に覆されるだろう。                (YK)