Letter from New York

夏期休暇は有意義に!

 アメリカのセメスター制(2学期制)の大学では5月の半ばには年度が終了し、夏休みに入ります。学生にとっては、学業との両立を心配せずにアルバイトやインターンシップに専念できるいい機会。半数以上の学生が、何らかのかたちで仕事をしています。3回生ぐらいになると、給料のよしあしではなく、就職(あるいは進学)に備えての経験を積むためのインターンシップを優先する学生も少なくありません。一言でインターンシップと言っても、その種類は、商品の販売から救急病院の手術室の助手に至るまで様々。現場で仕事を学ぶという点では、日本でいう新入社員の研修期間に似ていますが、就職後ではなく在学中に経験するのが普通です。アルバイトと異なり、特別な分野の実習を「させてもらう」制度なので、無給の場合もありますが、この経験の有無は就職活動に大幅に影響を与えるので、慎重に職場を選ぶ必要があります。企業側にとっても、卒業後に即戦力となる人材確保のためのいい機会だと言えるでしょう。

 休暇中に更に学業にいそしむ学生もいます。アメリカの大学では、違う大学からの単位を所属大学にトランスファーすることは比較的容易ですが、特に夏の間に外部からの学生の履修を奨励する大学は少なくありません。サマースクールは、休暇中に学生に学習の機会を提供すると同時に、大学にとっては大切な収入源。そこで、マーケティング戦略にも工夫がこなされています。全米の大学にコースカタログ(履修教科の紹介やスケジュールを含む)やポスターを配布する大学もありますが、キャンパスにある湖やビールの飲める学生会館をうたい

文句にした大学もあり、学生の「夏休みぐらい普段と違う環境で勉強したい」という気持ちをくすぐろうとする意図が窺われます。そういえば、2、3年前に見たコーネ

ル大学の宣伝ポスターには、美しい初夏のキャンパスを背景にでかでかと「ここが冬にもこんなに美しいと思ったら、大間違い!」と書かれていました。確かにニューヨーク州 upstate の冬の寒さは厳しいので、「気候のいい時期に来たいなら今がチャンス」というわけですが、ユーモラスなキャッチフレーズに思わず興味をそそられました。

 大学教員の年間勤務期間は普通9ヵ月に定められており、夏の3ヵ月は自由に過ごすことができます。希望すればサマースクールで教えることも可能です。また、忙しい年度中に参加できなかったコンピューターや教授法などのワークショップに参加する教員もいます。「質のいい教授陣は大学にとっては大切な資源」というわけで、大学側も教職員の教育に余念がありません。特に最近は夏の間もコンピューター講座を設ける大学が増えつつあるようです。普段は専門分野の講義をしている教員もここでは生徒に戻るわけですが、先日、初級レベルのPC講座を覗くと、「一度にこんなにたくさん覚えられない」「そんな専門用語を使ったら解らない」と駄々をこねる姿も見られ、学生が見たらさぞかし愉快がるのではと思わずにはいられませんでした。

 今月は教授法のミニ講座に参加しました。教育理論だけでなく、実用的な教室内でのteaching のノウハウのセッションもあり、特に視覚教材の導入法、わかりやすい板書法、学生の興味をそそる話法などの指導が好評でした。時代とともに学生のタイプや興味も変わり、それと共に教授法の更新も必要なので、教員の勉強にも限りがありません。それで、時間のある休暇中に勉強しておこうというわけです。

(佐藤奈津)