Americas in Brief

先達「アメリカス協会」

合衆国アメリカには、すでに30年以上前の1965年に非営利の民間団体 The Americas Society(アメリカス協会)がつくられ、いまでも活動している。創設者は米財界の重鎮、David Rockfeller氏でいまも名誉会長として同協会を見守っている。

インターネットのホームページに紹介されている同協会の説明文によると、協会の目的は、西半球(南北アメリカ)の国々の政治、経済、文化を合衆国の人々に啓蒙することにあり、年間を通じて、合衆国が中心となり、アメリカス諸国の豊かな文化遺産を祝福するイベントの数々を催すと共に、西半球の政治、文化、財界の指導者を集め、アメリカスの結束に努力している。

たとえば、この9月18日から年末までニューヨークのThe Americas Societyの展示館で「スペインの民俗芸術とアメリカス世界でのその変容」と題する展覧会が行われている。また来年春には現代ラテンアメリカの写真についてのシンポジウムや展覧会が行われる。

一方このThe Americas Societyの外郭団体としてThe Council of the Americasという組織があり、南北アメリカ間の通商貿易、経済協力を話し合って、民間の側から政治経済の一体化に向けて側面援助している。

ここで面白いと思うのは、従来から合衆国側には、ラテンアメリカは「自宅の裏庭」という失礼な発想があり、合衆国あってのラテンアメリカとの「常識」があったかにみえ、一見「親分子分」の関係と考えられたのが、大きく変わりだしたことだ。5月のチリでのアメリカス首脳会議では、唯一閉め出されているキューバが主役の一員を演じたことであり、合衆国を除き、カナダを含むすべての国がキューバのアメリカス

復帰の意向を一斉に示したことだ。さすがの合衆国ももう反対することはできず、首脳会議直後にカナダの外相がキューバを訪問することを認めた。

キューバの側も「その日」に備え、社会主義の最後の牙城を守っているにもかかわらず、ローマ法王を本年早々ハバナに招き、歓待して点数をあげた。もはやキューバの「村八分」の解除は時間の問題になったといえよう。

1930年代のFDR 時代からの政治の流れを見てくると、合衆国の黒人たちは基本的にリベラルで、民主党支持が常識と見られていたが、最近、黒人は保守主義者という見方が強くなってきた。The Economist(98年7月18日号)によると、合衆国の黒人たちは公民権問題など黒人自身の権利の問題になると、保守主義者には厳しくぶつかるが、そのほか同性愛、妊娠中絶、ドラッグのような社会問題になると、白人たちよりはるかに保守的な意見になるという。

黒人たち少数派の教育、就職の差別問題でのハンディを克服するために設けられたアファーマティブ・アクションについては、すでにカリフォルニア州の住民投票ではこれを廃止する意見が多数派になったが、あるギャラップ世論調査によると、黒人の74%は雇用に際して少数派に優先権を与えることに反対する結果がでたという(同誌)。

こうなると、保守派の共和党が今秋の中間選挙、2年後の大統領選挙で、ニクソンがかって採用しようとしたような南部戦略を考え、黒人票の取り込みを考えないはずはない。ただ共和党は「小さい政府」を目指しており、そうなると役人の世界での黒人の職場に影響がでかねないことが悩みの種のようだ。