Research

 Amerian Feminism のいま

 Feminism(=Fm)は男女同権(平等)・女性解放(尊重)主義と訳しうるし、経済的・精神的・生活的・性的自立主義とも訳しうる。1992年2月のTime誌とCNNによる女性の意識調査では、自分をfeminist と思う人は29%(思わない人63%)だが、Fm 第2波とも呼ばれた女性解放運動が自分の生活を良くしたと思う人39%、それが女性多数の考えを反映したと思う人39%と共に10%多く、母親より若い女性の方が自由だと思う人は82%。63年にFm 第2波のきっかけを作ったFriedan のFeminine Mystique と、大統領女性の地位委員会の報告書 American Women とが出たころは、現体制を自由主義的に改革していこうとするliberal 派しかいなかった Am Fm は、その後段々多様化・複雑化・global 化してradical、 socialist (≒Marxist)、black、indigenous、ecological、post-modern、lesbian separatist 等の諸派を生み、80年代以降 Backlash (ファルーディ著のベストセラー)の逆波にもまれている。この「逆襲」は大衆文化を偽装し、統計を誤用して、女権拡張運動こそは女性の地位の低下を招いたかに宣伝する。その名うての例を二つ挙げよう。

86年2月14日付けの Advocate 誌は Yale と Harvard 大学院生の未発表共同研究を特ダネの様に発表。大卒女性の結婚確率は30歳で20%、35歳で5%、40歳で1.3%!これがアッという間に世界をかけ巡った。だがこれが parametric model を用いた、sample 数の少ない82年の高齢女性対象の調査からの推定(それも女は年上の男と結婚するという)に基づいていることに疑問を抱いた人口統計学者(32歳で年下の男性と結婚している)が、standard life table という 手法で、80年の国勢調査のsample 多数を用いて計算し直したら、それぞれの歳で3倍、7倍、23倍も上昇!しかも30歳なら高卒女性より結婚可能性は上昇した。だが後者の反論はマスメディアの「上層部がこれを差し押さえ」「掲載されず終いだった」(新潮社、訳本36ページ)。

もう一つは幼い子連れの離婚女性の生活水準は1年後に平均73%も低下し、夫の方は42%も上昇するという衝撃的なニュース。これも著者らによる綿密な追跡調査により、それは回答率の低い、少なすぎる離婚訴訟 sample からの当事者の記憶に頼った調査結果がマスコミ受けしたための誤報で、元夫による養育費未払いこそは「貧困の女性化」の元凶だと解明(同訳書45ページ)。

他方、着実に上昇してきたのが女性の就業率(離・死別者を含め既婚女性の70%が有業)、昇給率(男性賃金の約7割)、昇格率(管理職の4分の1、地方議員の18.4%=1345人、小売事業所所有者の7%)。高い資格の取得者数もめざましく上がり、1958年→88年では女性の医者は347人(5%)→5128人(33%)、弁護士は272人(3%)→14519人(41%)。博士号取得者数78年→88年では生命科学で778人→1285人(+65%)、工学30人→178人(+493%)、数学のみ−35%だが物理学で29人→57人(+97%、男性では−10%)。牧師でさえも主要20教派の11.5%(救世軍では62%=3220人)は女性。南アメリカで出現した貧困・従属からの解放の神学にも影響されたfeminist 神学も盛んである。「女性を真に平等な男性の partner として、今こそ米社会の本流に参加させるため」(66年に設立され会員18万程のNational Organization for Women の目的)、米女性は湾岸戦争にさえ2.8 万人(6%)参加。1848年に運動としての第1歩をふみ出した時の如く、黒人向上運動とも微妙に連動し合ってきたのが Am Fm である。         

(児玉佳與子)

 参考文献 Faludi, Susan. Backlash: The Undeclared War Against American Women. New York: Crown,

1991. 伊藤・加藤訳『バックラッシュ―逆襲される女たち』新潮社、1994年